2017年11月09日

京大公共政策大学院「厚生労働政策」発表資料



現役世代の賃金・所得アップ施策を考える

1.近年の賃金・所得状況

(1)正社員・正職員の賃金(月収ベース・万円)
  正社員の賃金は近年ほぼ上っていない。



出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より作成

(2)正社員・正職員以外の賃金(月収ベース・万円)
 非正社員の賃金は顕著な増減傾向は見られなかったが、2014年以降所定内給与が増加傾向。



出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より作成


2.このまま賃金・所得が上がらないことで考えられる社会課題

 ・婚姻率が低下し少子化にいっそうの拍車がかかる。
   →2025年に団塊世代が75歳を超え、2040年代に高齢者人口がピークを迎えるとされている。今後もほぼ確実に社会保障を支える現役世代の負担は増え続けていく。
   →配偶者や子ども、親がいない独居・孤立世帯が増える。(2040年の60歳代の未婚率は男性が30%、女性が20%を超える見込み。その親も多くが亡くなっていることから低所得高齢者の孤立化が進む)
 ・1990年代半ば以降に就職した氷河期世代以後の世代の貯蓄率低下により、将来的な社会保障費(生活保護等)の給付が大幅に増える可能性がある。または同世代に対する年金や医療介護サービスは大きく縮小される可能性がある。


3.なぜ賃金・所得は上がっていないのか?

(1)10月27日 配布資料(久本憲夫,2017)による意見交換から
 ① 公表賃上げ率(ベースアップ)が定期昇給分を内包しているため
 ② 部課長級ポスト・率が減ったため
 ③ 福祉介護職などは不足感が強いにも関わらず所定内給与上昇がほとんどないため
など

(2)「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」(玄田有史編,2017)から

① 労働市場の需給変動に係る要因
   ・「需要か供給のどちらかの賃金弾力性が無限大のときは、賃金は変化しない。労働需要側の払っても良いと思っている賃金が固定されているので、労働供給が減るとその分だけ就業者数が減って、賃金は変化しない。」、「製品市場での価格競争や原材料費の高騰などにより、労働コストを削減する必要が生じた場合、コスト削減圧力によって離職が増え、実際に需要超過が発生しているわけではないにも関わらず、人手不足「感」が生じる可能性がある。」(p8)
 ・「30歳代を中心とする既婚女性や60歳を超える高齢者といった伝統的に就業率が低かった層の就業率が、今世紀に入り着実に上昇してきた。非正規労働者の労働供給が弾力的で労働供給曲線が水平に近ければ、労働需要曲線が右シフトしても均衡賃金の上昇は限定的になる。」(p110-111)
② 行動経済学に係る要因
 ・「過去10年間で所定内給与のカットを実施した企業ほど、所定内給与改定額が大きいほか、利益率の上昇に伴ってより多く所定内給与を引き上げていることが明らかになった。このことから、所定内給与の下方硬直性によって、日本企業の多くが賃上げの不可逆性に直面しており、それが賃上げを抑制する原因の一つになっていると指摘できる。」(p80)

  ③ 賃金制度など諸制度に係る要因
  ・「不況の深刻化のなかで、それまで当然視されていた“ベースアップ”という制度自体が、2000年代を通じて消失していった」「併せて、ガバナンスの変化に基づく成果主義的な賃金制度を反映し、役割・職務給の急速な普及が、全体の賃金の動向に影響した」「その上で経済環境の不透明性が増し、企業は賃金をコスト要因とみなす傾向が強まっていることから、人手不足が続いたとしても今後の賃金上昇は厳しい」(p289-290)
  ・「変化は、“積み上げ型”ではない“ゾーン別昇給表”の登場というかたちで行っている。“ゾーン別昇給表”は同一等級に属する労働者の賃金を一つの金額に収斂させようとする力があることを指摘した。」「この賃金の収斂機能には、中長期的にみた場合、賃金表の書き換えを伴わない春闘による賃上げ効果を薄める機能があることもうかがわれた」(p223)

  ④ 賃金に対する規制に係る要因
  ・「現在の成長産業である医療・福祉系では、どんなに人手不足になっても、すぐには賃金が上がりにくい仕組みがあります。福祉業界における規制の影響は強固で、2000年代以降、雇用者数はほぼ倍増したにもかかわらず、賃金は低下しました。」(p292)

  ⑤ 正規・非正規問題に係る要因
 ・「1990年代以降、パートをはじめとする非正規率は大きく上昇していく。」「1993年~2016年の全期間を通じて、パート比率の変化(上昇)は、現金給与総額減少の最大の要因になっている。1999年~2002年の失業が最も深刻だった時期に、パート比率上昇の影響は大きく賃金全体を押し下げてきた。」(p193-194)
 ・「高齢者の大卒非正規労働市場に限れば、そこには一気に超過供給が生まれます。その結果として、高年齢・高学歴の非正規雇用の賃金自体が大きく下落した」(p295)

 ⑥ 能力開発・人材育成に係る要因
 ・1990年代以降、株主価値や市場価値の重視という要請を受け、内部労働市場における長期的な能力開発が困難になりつつある」、「その結果、好業績を生み出してきた労働組織は衰退し、その中核にあった分厚い中間層も崩壊しつつあることが、全般的な技能不足と賃金停滞の両方を生み出している」、「就職氷河期世代は、以前の世代に比べて20代の頃に上司や先輩からの指導や勤め先での教育・訓練プログラムの受講経験が乏しかった」(p295-297)

 ⑦ 高齢問題や世代問題に係る要因
 ・「給与水準が他世代と比べて相対的に低くなった世代は、それ以後も相対的劣位が続く。」、「団塊ジュニア世代や30歳代後半の世代は、若年期に相当する2000年代の労働市場環境が厳しかったため、適職に就職することが容易ではなかった。また企業が取り巻く環境が厳しかったこともあって、職場での教育訓練機会が十分に付与されなかった人も少なくないように思われる。」、「現在35歳代後半の世代はさらに相対的給与水準が低い位置にあるので、40歳代の賃金低迷はしばらく続く可能性が否定できない」(p175-178)
 ・「退職者の時間賃金と入職者の時間賃金にかなりの開きがあることは、労働市場の現状を評価する上で重要」(p282)

(3)その他の私見


4.課題解決に向けて(ディスカッションしたいテーマ)

 (1)内部労働市場が担ってきた長期的な能力開発機会の代替性・補完性について
   1990年代前半までの従来の日本型雇用システムの中で行われてきた内部労働市場における長期的な能力開発・生産性向上の機会が失われ、結果として賃金上昇が見られないとされている。その要因は成果主義の導入による上司や先輩社員の“余裕”の喪失や、終身雇用がもはや成立せず人材への教育投資意欲が減少したこと、また非正社員の増加により、単純労働をしながら上司が丁寧に指導するOJT機会が減少したことなどが挙げられている。
    こうしたことから、内部労働市場が人材育成を行う重要な場であることに変わりはないが、今後は公共機関や企業外、業界が育成機能を拡充させていくことでこれを補完することが考えられるが、どのような施策を行えば、こうしたことが実現できるのか。
また、社内ポストが減少する中で、そもそも能力開発は賃金向上につながるのだろうか。仕事競争モデルは機能できるのだろうか。

 (2)壮年非正社員の正社員へのキャリアアップについて
   非正社員・パートの増加が1990年代以降の賃金低下の主な要因だとする研究を挙げたが、そうであるならば非正社員・パートタイム労働から正社員・フルタイム労働へシフトさせることができれば賃金を上げることができるかもしれない。
しかしながら、30代以降の正社員への転職は機会が限定される。内部労働市場で十分な能力開発機会を得ることができなかった非正社員にとって、同世代の30代、40代正社員と比べて能力格差が一定あると思われる。こうした格差を縮めなければ、同一労働同一賃金の運動も掛け声だけに思わるかもしれない。どうすれば壮年非正社員の正社員へのキャリアアップを実現することができるのだろうか。

 (3)医療介護、保育分野、又はサービス職等の構造的な低賃金の問題について
    医療介護や保育、サービス職などは特に人手不足であるにも関わらず、賃金は上昇していない。医療介護や保育の職種については、民間施設に対する報酬が公定歩合として定められていることが大きい。また販売職や旅館ホテルなどの対人サービス職は、そもそも付加価値が全体的に低く、経営者は賃金を上げたくても上げられない環境にある。
    少子高齢化に伴い医療介護職、保育職のニーズが高まり、また第3次産業が今後も成長していく中で、労働人口に占める当該分野の比率は高まっていくと考えられる。そうだとすれば、こうした職種の低賃金且つ、実質的な天井ある賃金制度は解消されるべきかもしれない。
一方で最近、堀江貴文氏は「保育職は誰でも出来るから(安い賃金)」と言って話題となったが、子育てや介護経験が豊富な現役引退世代をソーシャルキャピタルとして保育・介護爺婆として活用し、若手人材は生産性が高い分野する施策もありうるのかもしれない。

  (4)若年者や壮年者の賃金が上がらない問題について
    賃金・所得の増加なくして少子化対策は可能だろうか。また、社会保障制度(特に年金制度)は維持できるだろうか。


参考文献
 「人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか」(玄田有史編,2017)
 「日本の社会政策」(久本憲夫,2015)「2017年度 厚生労働政策講義資料」
 「壮年非正規雇用労働者の仕事と生活に関する研究」(労働政策研究・研修機構,2015)
 「就職氷河期世代の経済・社会への影響と対策に関する調査研究報告」(連合総研,2016)
 「若年者就業の経済学」(太田聰一,2010)
 「非正規雇用のキャリア形成」(小杉礼子・原ひろみ編,2011)
 「底辺への競争」(山田昌弘,2017)
  


Posted by 藤井哲也 at 21:09Comments(0)書籍備忘録

2017年10月13日

非正規雇用のキャリア形成(小杉礼子、原ひろみ,2011)


備忘録

p28


p29-30


 2002年までに比べて2003年以降の方が移行者比率は高く、とりわけ20歳代後半の移行率が高まっていることが分かる。男女に分けて、同様に2003年の前後での変化をみると男女とも同様の傾向を示した。2002年から2007年にかけて20歳代後半の移行率が高まったことは先行研究(労働施策研究・研修機構2009=「若年者の就業状況・キャリア・職業能力開発の現状-平成19年版「就業構造基本調査」特別集計より」)での指摘とも一致している。

p64


p72
 以上まとめると、標準的な正社員型キャリアとの対比では、総じて男性や大学以上の段階の学校に通った経験があることが「正社員優勢」になることにプラスの効果を持ち、中卒や学校中退していることはマイナスの効果を持っていることが明らかになった。一方でこれらの属性的な要因をコントロールしたとしても、離学した時期が「正社員優勢」以外のクラスターへのなりやすさと関連していることも明らかになった。すなわち同じ属性を持った個人だったとしても90年代前半までの比較的好景気の時期に離学したのか、それとも不況に突入した1990年代半ば以降に離学したのかによって正社員型のキャリアを歩みやすいのかそれとも非正規を中心としたキャリアを歩みやすいのかが異なってしまうことを意味する。
 また非正規型初期キャリアクラスターを比較した結果からは三つのキャリアクラスターを分化させる要因は多くはなく、離学した時期も影響を及ぼしていないことが示された。そのなかでは、男性や大学・大学院に通ったことがあることは正社員への移動にプラスに働く一方で、学校を中退することは正社員として働き始めることを阻害し、非正規を織り交ぜた初期キャリアの形成を促進する可能性が示唆された。

p76
 社会人になってから教育機関に戻るリカレント教育が注目されて久しいが、多くの人は教育機関を一度離れた後に、再度教育機関に戻ることはしていない。
 その意味では、教育(や訓練)と就労の間を行きつ戻りつする形での「ヨーヨー型」の移行は日本ではほとんど生じていないと考えられる。


  

Posted by 藤井哲也 at 10:05Comments(0)書籍備忘録

2017年10月11日

年者就業の経済学(太田聰一,2010)④


備忘録

p271
 このような制度(キャリア形成促進助成金に基づく有期実習型訓練や、実践型人材養成システム)には幾つかの複合的な効果がある。まず、企業に対しては、訓練への助成を行って、若年者の採用に伴う経済的なデメリットを抑制することで、経済全体の求人を増やすという効果を期待できる。また、訓練は確実に行われるので、訓練実施企業で採用されなくとも若年者の能力開発となる。とりわけ企業による実習を重視したプログラムは、従来の公的な職業訓練よりも社会で通用するスキルの効率的な習得に役立つ立つものと思われる。

p287
 まず信頼しうるデータを確保することが必要になる。プログラム参加者の様々な属性と、プログラム参加前後の賃金や雇用面の情報は必須のデータといえる。プログラムが成功して就職できたように見えても、雇用の質が悪く、就職後しらばくして離職したりすると、それは成功したプログラムであるとはいいがたい。そうした点を把握するためには、プログラム参加者に対して継続的な調査を実施しなければならない。
 プログラムの対象者と同等の属性を持つ非参加者についても、同様のデータを集めて参加者のデータと比較することで、より正確な分析が可能となる。いずれにせよ、精密な測定を目指すためには、専門家によるアドバイスに基づいた調査票の立案と実施方法の選択が必要となろう。  

Posted by 藤井哲也 at 15:41Comments(0)書籍備忘録

2017年10月11日

若年者就業の経済学(太田聰一,2010)③


備忘録 p229-230

 厚生労働省による2009年度「能力開発基本調査」によれば、過去1年間でoff-jtまたは計画的なojtを実施した事業所割合は、正社員に対しては73.8%に達したが、非正社員に対しては41.8%にすぎなかった。ただし、正社員と非正社員では、勤めている会社の規模や産業の平均値も違うし、個人の年齢や学歴の傾向も違うので、それらをコントロールしても雇用形態によって企業内訓練の実施に違いが生じるかを検討しなければならない。

 そこで労働政策研究・研修機構(2009a=「非正社員の企業内訓練についての分析-平成18年度能力開発基本調査の特別集計から-」)は、2006年度の「能力開発基本調査」の個票を用いて、さまざまな企業や個人の属性をコントロールした推計を行ったが、正社員の方がoff-jt受講確率が高いことを見出した。結局、フリーターなどの若年非正社員は、正社員に比べて能力開発の機会が小さくなっており、そのことが将来的な賃金の伸びを期待しにくい原因となっている。


p241-243
 
 企業は新卒採用に際してコミュニケーション能力や協調性、物事に対する積極性などを重視しており、学力を最重要な要素と位置づけている企業はそれほど多くない。また、労働者の生産性は、これまで述べてきたように、ojtを中心とした企業内訓練で涵養されるはずである。よって若者の学力水準の低下は企業内訓練によって十分に補言えるものであるし、それほど深刻な問題ではないかという議論があり得る。
 しかし、知的スキルの特質を考慮すれば、事はそう単純ではないことがわかる。精算職場に降り立って技能形成の実態を調べた小池和男の一連の業績は、現代の精算職場で求められている技能は「匠の技」よりもむしろ「推理の技」であることを明らかにした。

 筒井(2005)は学校教育で涵養されるような「認知的スキル」が作業能率に直接的に影響を及ぼすことを指摘している。そおで示された管工事・水道施設工事会社(零細企業)の現業職の事例では、入職段階の従業員には「穴を掘ったり、管をつないだり」という「身体的スキル」が求められるが、初期段階を過ぎると現場作業であっても図面を描いたり、理解する能力、すなわち「認知的スキル」が求められるようになる。そして労働者がそうしたスキルを持っているかどうかによって、作業の能率が大きく異なるという。

 結局、学校で蓄積される基礎学力は、その上に企業内訓練による能力向上を開花させるための土台であり、その弱体化は企業にとって大きなダメージとなりうる。経済学的な用語でいえば、学校教育で涵養される「一般的スキル」と企業内の訓練で身に付ける「企業特殊的スキル」は補完的な性格であり、「一般的スキル」が低下すれば、企業内での訓練効率性が低下する懸念が生じる。


  

Posted by 藤井哲也 at 11:39Comments(0)書籍備忘録

2017年10月09日

若年者就業の経済学(太田聰一,2010)②


備忘録(p98-100)


 世代効果の研究の中で主要な位置を占めるのが、賃金水準への影響である。賃金水準は経済厚生の端的な指標であり、学卒時の好不況の長期的な影響を総合的に把握するうえできわめて有用である。それゆえ、1990年代後半から比較的多くの研究がなされている。
 
 初期の研究では、データとして「賃金構造基本統計調査」を用いてきた。そこでは主に正社員の賃金が把握される。1990年代半ばまでの男性労働者のデータを用いた研究からは、①提唱期に就職した世代は、高度成長期に就職した世代に比べて低賃金い甘んじる傾向があり(玄田1997)、②高校卒の卒業年の失業率の上昇は実質賃金の低下をもたらし、主要企業雇用人員過不足判断指数の悪化は大卒の実質賃金の低下をもたらす(大竹・猪木1997)、ということが分かっている。

 これらの研究は、二つの側面で重要である。ひとつは、正社員になった人にとっても、不況期に学校を卒業することは賃金面でのダメージをもたらすことを明らかにした点である。よって次に明らかにすべきはその発生メカニズムとなる。

 学卒時に不況に直面した世代は、規模の大きな企業に就職することができにくくなるかもしれない。就職する企業規模が小さくなれば、賃金水準が低下してしまうので、そうしたルートで賃金の世代効果が生じる可能性がある。産業や職種でも同様な「割り当て」現象が発生するかもしれない。あるいは、もしも不況期に就職する人の少ない部分が、自分の適性と異なる仕事に就かざるを得ず、マッチングの低さが賃金の伸びの低迷をもたらすのであれば、不況期に学校を卒業することはやはり労働者にとって不利に働く。

 もう一つは、学卒時の労働市場の影響は一九九〇年代以降の不況期のみに特有の現象ではないという点である。いわゆる「就職氷河期」よりも前から、不況期に学校を卒業した世代は賃金面で不利な状況に陥っていた。ただしその時期には不況期に卒業したからといって長い期間にわたって無業に陥ったり、非正社員として就業したりするようなケースは少なかったと思われる。

 これらの研究に続いて、「就職氷河期」が若年層の賃金に及ぼした効果の分析も活発化した。大きな特徴としては、無業や非正社員を含むデータを利用することで、賃金あるいは収入低下のメカニズムをより詳細に明らかにしようとした点が挙げられる。

 「労働力調査特別調査」と「労働力調査」の個票データ(1986-2005)を分析したgenda,kondo and ohta(2010)によれば、中卒及び高卒では、卒業年の失業率が高かった世代ほど、少なくともその後12年にわたって実質年収が低水準になることが判明した。卒業年の失業率が1ポイント高くなると、中学・高校卒のグループでは、その後12年以上にわたって実質年収は5-7%程度持続的に低くなる。

 一方、短大・高専訴追状のグループでは、中学・高校卒グループほどの持続的な年収低下は見られなかった。具体的には、短大・高専卒以上では、学卒時の失業率が1ポイント上昇したときの実質年収の減少は2から5%程度であり、経験年数を経ると共に影響が弱まっていく。まとめると、学卒時の不況は、学歴が低い若年の実質年収を長い期間にわたって低下させることが分かった。


  

Posted by 藤井哲也 at 10:48Comments(0)書籍備忘録