2017年10月09日

若年者就業の経済学(太田聰一,2010)


 
備忘録(p136-137)

 最も重要なポイントとして、現在の経済状況の悪化に出口を見出しにくくなると、企業は若年採用を大きく減少させてもおかしくない。なぜならば、その倍には企業は長期的な企業規模の縮小を覚悟しなければならないので、将来の基幹となる人材も少なくて済むようになるからである。1990年代以降に「氷河期世代」が登場した背景には、企業が長期的な成長や存続に自信を失ったために、将来の稼ぎ手の採用までもためらったことがあるかもしれない。

 筆者は、このような理解が1990年代以降の労働市場を理解する重要な鍵であると考えている。バブル崩壊以降の日本経済は、未曽有の低成長に加えて、将来の不確実性の増大に直面した。これは日本経済が資産デフレという新しい事態への対応に時間がかかっただけでなく、中国をはじめとするアジア諸国の経済的台頭が企業の競争環境を一変させたことも大きな影響を及ぼしたと思われる。その結果として、不況が長引くにつれて企業は自社の将来についての自信を大きく失うことになった。

 こうした企業を取り巻く状況の変化は、雇用面にも大きなインパクトを及ぼした。従来、不況期の日本企業は労働時間の短縮を大きく行う反面、雇用水準は大きく削減させなかった。(労働保蔵と言われる)。不況はいずれ回復するので、そのときに人材不足を招かないように人員はキープするという人事方針をとっていたためである。

 ところがバブル崩壊後多くの日本企業は自社の長期的な存続にすら自信を失ってしまい、将来への投資であるはずの若年正社員採用まで大幅に削減するようになった。その一方で、不確実性の高まりに対応して雇用調整の柔軟性を確保するために、非正社員のシェアを大きく増やしていった。そのために新卒者で正社員採用されなかった者が、大量にフリーターになるという現象が生じたと言える。



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