2017年11月14日

「仕事のスキル 自分を活かし、職場を変える」(小口孝司、楠見孝、今井芳昭編著,2009)

備忘録 p10-20

暗黙知はどのように獲得されるのか

(1)個人レベルの暗黙知
 知識の源としては、職場における個人的経験のような具体的経験と、研修や書物から得た形式的あ知識がある。さらに、知識には、大きく3つの水準が想定できる。知識の一番具体的な水準は、エピソード記憶に蓄積される個々の経験である。ここでは、個別の顧客との営業場面の経験がいつどこでという情報とともに貯蔵される例えば最初の契約、トラブル、失敗、成功、転機などの具体的経験は類似した状況で利用するために事例として検索されたり、教訓として後輩に語られたりする。第2の知識の水準では、類似経験が重なることにより、そこから時間的パタンが帰納されて、時間的な順序に関するスクリプトや手続き的知識が形成される。ここでは、例えば、営業経験によって、営業場面での顧客にアプローチし、コミュニケーションをして、提案そして契約に至る一連の行為の系列に関する知識が形成される。もっとも抽象的な第3の知識の水準では、意味記憶において、エピソード記憶の類似経験が抽象化されて典型的な営業場面に関する知識が形成されたり、手続き的知識が抽象化されて形式的知識であるルールが生成される。

(2)組織レベルの暗黙知
 暗黙知は(1)で述べたように個人のレベルで獲得され、知識が形成されるだけではなく、組織の中で共有・増幅され、製品・サービス、業務システムのような形で、イノベーションを起こすことがある。こうした暗黙知の組織内のプロセスに注目したのが野中と竹内の組織的知識創造理論に基づく研究である。
 
暗黙知の獲得において大事なことは何か
 
 管理職経験年数が長くなるに従って、暗黙知尺度得点が高まることを見出した。すなわち、管理職は暗黙知を経験から学習をしていると考えることができる。
 同じ年月の間、同じ職場で働いているにもかかわらず、仕事のできる人とそうでない人の差がつくのはどうしてだろうか。
 スタンバーグとワグナーは、経験年数よりも経験から学んでいく学習能力の重要性を指摘している。すなわち、4節で述べたように、日本の企業はOJTが中心のため、仕事の経験からスキルや知識を学習することが求められている。さらに、管理職は、異動や昇進に伴う職務の変化への適応と、変化に対応した新しいスキルや知識の習得が求められている。特に、変革期における管理職には、新しい経験からの学習能力が重要である。
 管理職における経験からの学習を促進する要因には、大きく分けると態度や傾向性の個人要因と組織特製や職場環境の要因がある。

 日本において管理職は経験からどのように学ぼうとしているのか。
 管理職の経験からの学習能力を支える態度の構造を明らかにするために、社会人データに対して因子分析を行った。その結果、管理職の学習を支える態度の構造として「挑戦性」「柔軟性」「無難志向性」「自己本位性」「評価志向性」の5因子が抽出された。

 なお、変革期の管理職に必要とされるスキルには、本研究で取り上げなかった一般的能力として、新しい環境の変化から情報収集するスキル、膨大な情報に基づいて批判的に思考するスキル、意思決定能力、過去の経験を新しい経験に結びつける類推能力が考えられる。また、より状況特殊的なスキルには危機管理能力、企業倫理などに関するものがある。これらも重要な今後の研究課題である。


同じカテゴリー(書籍備忘録)の記事画像
京大公共政策大学院「厚生労働政策」発表資料
非正規雇用のキャリア形成(小杉礼子、原ひろみ,2011)
同じカテゴリー(書籍備忘録)の記事
 「批判的思考力を育むー学士力と社会人基礎力の基盤形成」(楠見孝、子安増生、道田泰司編,2011) (2017-11-14 23:00)
 不平等を生み出すもの(レスター・C・サロー著、小池和男・脇坂明訳,1984) (2017-11-09 21:22)
 京大公共政策大学院「厚生労働政策」発表資料 (2017-11-09 21:09)
 非正規雇用のキャリア形成(小杉礼子、原ひろみ,2011) (2017-10-13 10:05)
 年者就業の経済学(太田聰一,2010)④ (2017-10-11 15:41)
 若年者就業の経済学(太田聰一,2010)③ (2017-10-11 11:39)

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。