2018年07月06日

AIに勝てる人材の可能性(3)



「人工知能と経済の未来」(井上智洋、文春新書、2016)から気になる
箇所を転載させて頂きます。

 今から15年後の2030年くらいには汎用AIが出現しているものと
 予測しています。私もその予想を支持しますが、全ての知性の面で
 AIが人間並みかそれ以上になるのは難しいだろうと思っています。
 前章でも述べましたが、「大部分の知性」と「全ての知性」では、
 天と地ほどの開きがあります。その開きの理由を一言でまとめると
 「生命の壁」が立ちはだかっているからです。
 (85頁)

 ところが、脳の作動原理が分かったからといって、全ての知性が
 再現できるわけではありません。というのも、私たちの知性は、
 私たちの持つ無数の欲望や感性と結びついているからです。
 人間の心に潜む欲望や感性の全てを取り出すことは、現在の
 技術ではできません。
 人間の欲望は、食欲や性欲など生存や繁殖に関わるものに
 限定されておらず、自殺願望や破滅願望をも含んでおり多方向的
 です。感性にしても、そよ風が頬を撫でたら心地よいが、
 強風が吹き付けたら不快であるというように、繊細かつ複雑です。
 (87-88頁)

 生命の壁として最も分かりやすく誰でも思いつくのは、AIが人間の
 よな身体を持たないがゆえに「身体知」を持ちえないということで
 しょう。「身体知」とは、泳ぎ方とかバッドの振り方、バイオリンの
 弾き方のような、ことばでは明示し難い無数の身体感覚に基づいた
 知識のことです。
 (93頁)

現在のAIは将棋ソフトや、自動翻訳や、レコメンドシステムなど、
ある機能に特化した「特化型AI」であるとされています。
しかし、人間の脳機能を真似ることで開発が進められているのが、
「汎用AI」と呼ばれるもので、人間の知性に近いものです。
現在、グーグル傘下のディープマインド社などが開発を急いでいます。

この「汎用AI」が実用化されれば、多機能な事を成し遂げつつ、
学習機能を備えて、より効率的効果的に問題解決ができる機械が
普及していくことになります。2030年代には実用化されるということ
ですから、もう10年、20年以内です。今の小学生が社会に出るころ
にはもう「汎用AI」が世に出て、多くの仕事を人間に変り行っている
事だと思います。


しかしながら、全ての仕事を直ちに「汎用AI」ができるのかといえば、
そういうわけではありません。「身体知」がないこと、人間らしさ(感性)
がないことなどが、その理由です。

英語の翻訳などはAIが担う事ができるはずですが、例えば
ビジネスにおける人間関係や社会環境、ライバル関係などを考慮した
交渉コミュニケーションなどは、汎用AIでも難しいと思います。

また画面の中のサッカーゲームでは汎用AIは部類の強さを誇るかも
しれませんが、実際に体を動かすAI搭載ロボットと人間とのゲームで
あれば、AIチームはおそらく人間チームには勝てないはずです。
(少なくとも2030年代では。いずれAIチームが勝つような時代も
 くると思いますが)

休日の使い方について「汎用AI」に相談した時に、
美術館や博物館を進めるでしょうか。仮に美術館や博物館をおススメ
してくれるAIが出たとしても、その人にとってどんな美術館がいいのか
もしくは、美術館と同様に、素晴らしい絶景が見える丘が同等の
価値を持ちうることをAIは理解できているでしょうか。
おそらく2030年代にはそうしたことをAIはカバーできていないはずです。

飛行機がない時代に、飛行機のことを想像できないように、
またロケットがない時代に、まさか星座や月を見上げていた観賞としての
宇宙がアクセス可能であることが想像できないように、「汎用AI」が出現
した時に、どのような社会が待っているのかは想像することは難しいですが
そのスピードは特異点があるかのように、ある時点から全く異なる次元の
社会になることはないと思われます。やはり汎用AIが出現したとしても
その進化には時間的猶予があり、人間はそうした社会変化に順応していく
必要があるものの、まず考えるべきは、「汎用AI」第1世代に備えて、
働く人や今の子ども達の教育や職業訓練を行っていくことであると考えます。

「汎用AI」第1世代である2030年代にあって、考えるべきことの前提は
「消費」と「生産」、そして「価値」の関係は変わらないことだと考えます。
すなわち、人間が生きていくために、より良い生活を過ごしていくために
「消費」はなくならないはずです。そして消費を支える「生産」もなくならない
はずです。この「生産」の部分を、人間とAIが分け合っていくと思われます。

そして「価値」は、「消費(需要)」と「生産(供給)」の関係で成り立つことは
いまから10年先、20年先でも変わらないはずです。


情熱を胸にICON179




Posted by 藤井哲也 at 16:02│Comments(0)情熱(私の思い)
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