2018年07月26日

「ワークライフシナジー」の視点から欲求階層理論を再構築する



 「仕事と生活とのバランス」を図式で考えると、
 以前は以下のようなものであったと思います。




 しかし何か違うんですよね。
 こうじゃないかと。




 「ライフ」の中に様々なものが含まれていると思います。
 そもそも「ライフ」を生活としているのもどうかと感じており、
 私としては「人生」、すこし重たいので、「生きがい」という
 感じではないかと捉えています。

 その中に「仕事」や「家庭」、「社会活動」などが含まれており、
 それらが「生きがい」アップにつながっていくものだと考えます。

 だから、ワークライフバランスは、仕事を減らして生活を
 増やすというものではなく、仕事も家庭も、社会貢献活動も
 して生きがいを高めていくための要素だと思うのです。

 また、仕事も家庭活動なども相乗効果を発揮して、
 仕事スキルの向上、ひいては自己成長につながるという
 私の実証分析結果に基づくと、自己成長という概念もまた、
 生きがい向上につながるはずです。

 * * *

 



 最近、欲求階層理論はワークモチベーションの視点から
 取り上げられ、論じられてきたように思いますが、
 生きがい向上の観点から見ると、例えば承認欲求は、
 「認められたい欲求」ですが、これは自分のやった成果や
 高めてきた能力等を正当に評価してほしい(得てして
 自己評価が高いので、自分の希望通りの評価は、
 他者からは得られにくいものですが…)ということで、
 企業の場合は、業績や能力に焦点があてられて評価される
 ことが多いと思います。

 労働者からすると、たとえ仕事での評価は低くとも、
 家庭内での評価、社会的評価が一定高ければ、
 企業内評価の低さに耐えられるかもしれません。
 
 ただ、企業で成果をあげられる人は、それなりの
 マネジメントスキルを有した方であり、
 子育てや社会的活動などの様々な経験を踏まえて、
 成長してきたわけであり、自分の成長という要素が
 非常に大きいと考えます。

 そのように考えると、欲求階層理論の中でも、
 認められたいという欲求や自己実現欲求を満たしていくためには、
 仕事だけではなく、家庭を大事にしたり、自分の能力開発などの
 要素が絡み合うことが求められるのだと思います。

 人事施策においても、これまでの企業内だけの評価に
 目を配るのではなく、自己成長をしてもらうために、
 いかにして仕事外の経験を積んでもらうか、家庭で家事や子育てを
 したり、社会でボランティア活動をしたり、NPO活動や自治会活動を
 してもらうのかという点も、モチベーションアップやリテンション、
 生きがいの向上につながっていくものだと思います。


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Posted by 藤井哲也 at 12:11Comments(0)子育てによる実践知獲得

2018年07月24日

ワーク・ライフ・シナジー‼‼



「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活のバランス)。

この言葉が2000年代前半に生まれて、もう10年以上が経ちます。
当時はなんて生ぬるい考え方だと思っていましたが、今の時代、
夫婦共稼ぎモデルが中心となってきており、子育てや家事と
仕事を両立させながら、生きていくということは、
一般的になってきているように考えられます。


しかしながら、「ワーク・ライフ・バランス」という言葉に、
ずっと違和感を覚えてきたのは、私だけではないと思います。
それは、仕事も家庭も、背反するものでもなく、
バランスを保つことは大切かもしれませんが、
いかにも長時間労働を是正せんがための方便のように
思えてならなかったからです。


この間、私が行っている調査研究によれば、
「ワーク(仕事)」と「ライフ(子育てなど)」との間には、
個々人の能力を向上させるという観点から言うと、
相乗効果があるということが分かってきました。





つまり、「ワーク・ライフ・バランス」(両立)ではなく、
「ワーク・ライフ・シナジー」(相乗効果)
です。

上図では、仕事を通じて得られる能力向上要素と、
子育てを通じて得られる能力向上要素とは
微妙に重なっていないことがわかります。
(例えば、「業務能力向上」は仕事を通じてのみ得られ、
 「他部門理解の促進」は子育てを通じてのみ得られる。
 「視野の拡大」は子育てのみで得られるetc)

仕事一辺倒の生き方(ワーカホリック)では、確かに仕事上の
必要知識や手順などを学ぶことはできるかもしれませんが、
他部門や他者とのコミュニケーションなどの能力は十分に
磨かれず、子育てなど職務外の活動で得られるのではないでしょうか。
視野の拡大などは正に典型的で、仕事一筋の人よりも、
多様な趣味を持ち休日はリフレッシュしつつ、子育てを含む、
様々な活動をしている人の方が、新しい概念を創出で来たり、
問題解決に向けた対処法を考え出せたりするように考えます。

これらのことから言えるのは、
仕事だけでは、マネジメントスキルを身に付けられず、
また子育てや家事、職務外活動だけでも十分にマネジメントスキルは
身につかなない。その両方を経験する中で、相乗的に
マネジメントスキルが形成され、スキルが習熟していくということです。



そういえば、仕事も遊び(や子育て)に一生懸命だった人の方が
生真面目で仕事一筋の人よりも出世が早く、また実際に仕事ができる
印象が強いのはなぜでしょうか。


仕事も子育ても相乗効果が見られるのであれば、
ワークライフバランス(両立)をしてもいいのかもしれません。
長時間労働是正という政策推進のみならず、
一人ひとりの働く人にとっても、スキル形成につながり、
また充実した生き方をしていけるのではないかと考えます。


「ワーク・ライフ・シナジー」こそ、概念的にこれから重視されるべきで、
男性にとって子育てや家事に対する価値づけ、動機づけになるでしょうし、
女性にとっては出産・子育てによるキャリア断絶の影響を緩和、
もしくは相乗効果でスキル形成につなげることもできる機会であると
捉えなおすこともできるはずです。

非常に重要な概念であり、今回の調査研究は、
私自身としては大変意義あるものであると考えております。


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Posted by 藤井哲也 at 16:58Comments(0)子育てによる実践知獲得

2018年07月18日

重回帰分析による「子育てによる成長実感」の検証(3)



最後に「子育てによる成長実感」に関して、
もう一つだけ記事を書いておきます。

それは「子育てによる成長実感」が、
果たして、「ビジネススキル」につながっているのかという問いです。

今度は、実践知として知られる「テクニカルスキル」と
「ヒューマンスキル」、「コンセプチュアルスキル」を従属変数とし、
「子育てによる成長実感6因子」と「仕事による成長実感6因子」を
独立変数として、それぞれ重回帰分析により、有意性を導きました。
(3つのスキルについては、ロバート・カッツ氏によるものです)

その分析結果は下記のモノです。




この分析結果を、前記事で導いた
「子育て経験がどのような成長実感につながっているのか?」と
組みあわせて図式したものが下記のものです。

子育てはビジネススキル獲得につながっているのか



どうやら子育てに関わっている本人が感じる「能力向上要素」と
実際に、実践知の獲得につながっている「能力向上要素」には
若干の相違があるようです。

つまり、自分では認識していない子育てによる能力向上要因が
仕事の現場では役立っていることが多いと言えます。
主なものとして、「部門間調整力の向上」と「視野の拡大」です。

この調査を行う際には、約500名の方々に、
「子育てを通じて獲得できる能力はどのようなものでしょうか」という
記述式の項目も入れています。
その内容を確認しても、「他部署・他者への理解促進」に関連する、
「人への思いやり」や「寛容性」、「新しいアイデア・創造力」や
部門間調整や業務能力向上と関連があるだろう、
「マルチタスクの管理」「柔軟性・臨機応変力」、「時間管理」などが
挙げられています。
(詳細はまたどのタイミングかで別記事にまとめます)


こうした自己認識と、実際には所得向上や出世などに影響を
与えている要素間では、少し違う関係にあると言えます。

しかしながら子育て経験による「視野拡大」や「部門間調整力」は、
有意な関係ではありませんでした。

こうした事柄を踏まえ、まとめるならば、
人によって「視野拡大」や「部門間調整力」に関する能力向上を
実感できるかどうかは、まちまちだと言える(有意ではない)ので、
子育てを通じてビジネススキル獲得を目指すのであれば、
「視野の拡大」や「部門間(他者との)調整力」を磨く意識を
もって取り組むことが、大切な事柄であることが示唆されます。


仕事も家庭も充実させようとする、
これからのワークライフバランスのあり方としては、
両方をシナジーさせるために、
子育てや社会的活動においても、
スキルアップを意識して取り組むことが、
重要であると考えます。


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Posted by 藤井哲也 at 14:14Comments(0)子育てによる実践知獲得

2018年07月15日

重回帰分析による「子育てによる成長実感」の検証(2)






前記事でも掲載した、「能力向上実感」に対して、「子育て年数」や
「家庭内の役割分担」が、影響を与えているかの分析結果です。

改めて振り返ると、子育て年数は影響を有意に与えておらず、
対して、子育てによりコミットするほど職務能力の向上にも
つながっていると実感している結果でした。


仕事経験が職務能力の向上につながっていることは、
これまでの先行研究の多くで分かっていますし、
私自身が大学院の研究で行った雇用形態別のビジネススキル獲得
に関する研究でも、「正社員としての就労年数」が
スキル向上に有意に影響を与えていることが分かりました。
(非正規社員としての就労には有意な関係性が見られませんでした)
関連するブログ記事


今回、調査を行った同じデータを用いて、仕事による成長実感は
家庭内役割分担や、子育て年数、就労年数は影響を与えているのかを
しらべてみました。



結果は、「仕事による成長実感」には、子育て経験はそんなに有意な
関係が見られないということです。

これも想定通り(仮説通り)で、仕事による成長は、「仕事の質」や、
その人の「挑戦性」や「柔軟性」、「批判的思考力」が影響を与えていると
考えていいでしょう。


ここまで見てきたように、ポスト就職氷河期(1993年以降)の
働くパパママにとって、家庭内でしっかりと子育てに取り組めば取り組むほど
段取り力が上ったり、効率的な仕事の進め方ができたり、
他部門(他者)理解、メンタルタフネスを鍛えることに繋がっていると言えます。

また今後検証が必要な事柄として、
「子育てによる成長実感」を感じている人は、「仕事による成長実感」も
感じていることから、どのように時間を過ごしたいのか、という意識が
能力向上につながっているとも言えるのかもしれません。

何事も、前向きに、主体的に取り組むことが能力向上につながるのだと
思います。余暇も子育てもレクリエーションではなく、「リ・クリエーション」の
意識を持ちながら、過ごしていいきたいと私自身も考えています。


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Posted by 藤井哲也 at 09:15Comments(0)子育てによる実践知獲得

2018年07月11日

重回帰分析による「子育てによる成長実感」の検証(1)



1部上場マーケティング調査会社に委託して行った、
「子育て経験がどのようなビジネススキル獲得につながっているのか?」
というアンケート調査について、欠損値等を除外して、
502件のサンプルを得ることができました。
アンケート調査期間は、本年3月下旬です。

仕事のスキルを定量化することは永遠の課題ですが、
今回は中原淳先生を中心とした研究チームが、「職場学習論」等で
用いておられる、能力向上に関する因子分析結果に基づいて
まとめられた6つの指標を、使わせて頂きました。

6つの能力開発に関する要素は次の通りです。
●業務能力向上
●他部門理解の促進
●部門間調整能力
●視野拡大
●自己理解の促進
●メンタルタフネスの向上

以上6つの能力開発要素の詳細については、
「職場学習論~仕事の学びを科学する~」(東京大学出版、中原)
をご覧になってください。


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【重回帰分析(OLS推定)結果】




従属変数は6つの能力開発因子とし、
独立変数は「子育て年数」と「夫婦間の子育て役割分担」、
統制変数として、「性別」、「批判的思考力」、「仕事による同因子の向上」
のほか、「就労年数」や3つの実践知を設定しました。

ちなみに「子育て年数」については、
1: 0年~2年 (116件)
2: 3年~5年 (132件)
3: 6年~10年 (127件)
4: 11年以上 (127件) というように4ランクに分類しました。

また「夫婦間の子育て役割分担」は、
アンケートで「家族内における子育て分担の割合」を
5段階で聞いたものです。
1が最もアンケート回答者の負担が重たく、5が最も負担が小さい
(1は配偶者などの負担が軽く、5は配偶者等の負担が重たい)
というものです。

また性別が大きく影響しているのではないか、能力開発の実感には
仕事による成長実感も相乗効果として影響しているのではないかと
考え、統制変数に必要と思われるものを加えています。


結果を見ると、「子育て年数(量)」よりも、「子育てに関わる役割(質)」
が、子育てによる成長実感に影響を有意に影響を与えていることが
分かります。

また以外にも性別はあまり関係しませんでした。
そして「批判的思考力」も大きく影響を敢えていることも分かりました。

さらにもう一つ。
仕事で成長実感を持っている人は、子育てでも成長実感を抱いていることです。
つまり、ここらへんはパーソナリティに関わるのかもしれませんが、
「何に対しても前向きに経験を積もう」、「得た経験を活かしていこう」と
考えている人は、結局、仕事であっても、子育てであっても、または
違う職場外の経験であったとしても、それらを成長の材料として
位置付けているのではないかと思われます。

もしくは、「子育て経験」と、「仕事における経験」の相乗効果が
見られるのかもしれません。この点は別の分析を行いたいと思います。


いずれにしても、「子育て年数」はそれほど有意な関係が
見られないということは、漠然と子育てに関わっていたり、
または「家族任せ、配偶者まかせ」にしていれば、結局、
子育てによる成長実感は得られないということです。
これは仕事にも当てはまることで、まさにその通りでしょう。



長くなってきましたので、記事を改めて続きを書いていきます。


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Posted by 藤井哲也 at 15:14Comments(0)子育てによる実践知獲得