2019年08月25日

「就職氷河期世代活躍支援」の概要


来年度から本格的に展開が始まる「就職氷河期世代活躍支援プラン」の概要が見えてきました。
厚生労働省の資料に基づくと、

(1)都道府県ごとのプラットフォームを活用した機運醸成
(2)福祉と就労をつなぐ都道府県ごとのプラットフォームの整備
(3)ハローワークへの専門チームの設置
(4)教育訓練事業者などの民間知見を生かした成果連動型委託訓練制度
(5)就職氷河期世代向けの短期資格等習得コースの設置
(6)働きながら無料で受講できるようなEラーニング講座などの開設
(7)就職氷河期世代に特化した求人開拓、マッチングなど
(8)トライアル雇用や雇用型訓練事業の拡充
(9)地域若者サポートステーションの取組強化
などが挙げられています。

なるほど。
しかし、メニューだけ見る限りでは、「(5)就職氷河期世代向けの短期資格等習得コースの設置」と「(6)働きながら無料で受講できるようなEラーニング講座などの開設」以外は、現在すでに取り組まれている施策の拡充の観があり、2000年代初頭から行われてきた若年者就業支援施策の焼き直し感が強いように思われます。

問題になるのは実効性です。
仮に、就職氷河期世代を新たに正社員30万人増やすという政府目標を達成しようとするならば、残念ながら現在、厚生労働省が示すプランでは難しそうだということは、就業支援に関わっている方なら体験的に理解できるように感じます。とりあえずプランを素案として提出してここからよりエビデンスも用いながら検討を深めていくなら分かりますが、このままの施策展開をするならば、きっと税金の無駄遣いに終わってしまうのではないかという懸念を覚えます。

働きながら無料で受講できる講座を設けることはいいことだと思います。
働くこと×学ぶことを掛け合わせることで、学びのスピードも質も変わります。
ただ、問題になりそうなのは、就職氷河期世代が果たしてそこにモチベーションを持つかどうかです。
この世代は、仕事や生活に追われており、とても余った貴重な時間を使って学びに活用しようかというと、私としては難しいのではないかと思います。そういう向学心高い人はきっとすでにホワイトカラーであったり、職場の管理者になっていると思われます。

また、1か月や2か月で習得し、正社員に結びつくようなスキル習得を目指す新たな職業訓練プログラムも、確かに数値上は効果がありそうに思いますが、あくまでこれは机上の空論と言っていいように思います。
なぜか。それは求職者の志望がその職種や業種にないからだということです。フォークリフトや運搬に関わる新たな資格を習得して正社員になれるなら、すでにこれまで行われてきた約15年間の若年者就業支援施策の中でなっていると思われます。あくまでこの世代が就業したいのは、そうした職種や業種ではなかったわけです。ジョブカウンセリングによって求職者一人一人にそうした職種・業種への意識を持ってもらえるようにつなげていくのもあり得るのかもしれませんが、実際のところ、そんなに簡単ではありません。

この就職氷河期世代がこれほどまでに非正規率が高かった要因の一つは、就労環境が悪かったということももちろんありますが、1990年代以降急速に高まってきた大卒率の上昇にもあります。大学を卒業してまで、現業系の仕事につくのは・・というプライドというべきか、拘りがあるため、あくまでホワイトカラーサラリーマンを目指して、ホワイトカラー系の非正規社員を目指したり、マネージャーや管理職を目指して、フードビジネスや物流、流通会社に就職したりしてきましたが、劣悪な職場環境、就労環境で入社後数年で退職してしまい、その後は非正規社員が続いてきたという人が大変多いように感じられます。

こうした対象者に対して、果たして夜間や土日通える講座をもうけたり、又は短期で正社員になれる現業系資格を取得するコースを設けても、実効性の点で大変疑問を覚えます。


私としては、いっそのこと、半年から1年間かけて、求職者支援の一環で、新しい時代に求められるスキルに特化して習得するようなプログラムをもうけていくべきではないかと思います。
具体的に言えば、大学や専門学校で学ぶような専門性が高い統計分析やマーケティングのスキル習得、またプログラミングのスキル習得、実践的な企画立案スキルの習得などです。

私の経験上、これまで見てきた職業訓練、とりわけ委託訓練事業などでは、基礎的なスキルを学ぶだけです。
例えば、ワード・エクセル・PPなどを学ぶだけであったり、基本的なマナーを学ぶだけであったり、もしくは介護福祉の初歩的な資格取得をするものとなっています。
とてもではありませんが、これで正社員になれるほど甘いものではありません。
根本的に公共職業訓練で行っている事業と、企業が求めるスキルとの間にかい離が生じており、就職できたとしても大変厳しい職場環境の会社であったり、または非正規社員として働き始めるということが多い見受けられます。

今回の3か年に亘る就職氷河期世代活躍支援は、まさにこれまでの施策の焼き直しであっては全く意味がないと思うのです。抜本的に職業訓練の中身を見直し、リカレント教育(学び直し教育)を進めなければ意味がないと思います。

たまたま、先日、日経新聞の社説で私の考えに近いものがありましたので、添付させて頂きます。

「就職氷河期世代活躍支援」の概要
日本経済新聞 2019年8月23日 朝刊記事



せっかく地方議員の仕事から、中央政治や中央省庁に近いところで仕事をすることになりましたので、こうした動向に注意深くモニタリングしていくと共に、私自身、政策形成過程にいる方々にアプローチを試み、私自身の想いや施策提言などをさせて頂きたいと思っています。





藤井 哲也









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