「若者のキャリア形成」(OECD編著,2015)

藤井哲也

2017年11月22日 11:58


備忘録

p111-112

 若者が労働市場に参入する際、その多くは臨時・派遣雇用契約である。OECD諸国のほぼすべてで、2013年には15歳から24歳の被用者のうち25%が、期間に定めのある契約であった。(図44) 自営を除けばこの割合は多くの国で50%に達し、・・・

 臨時・派遣雇用御契約は大多数のOECD諸国で、働き盛りの労働者よりも若年のほうにはるかに広範囲にいきわたっている。このことが示唆するのは、多くの若い新社会人は、初めは臨時・派遣雇用の契約をようやく勝ち取るのだが、その後何とかしてより安定した職へと移行するということである。これは最近の統計的研究によって裏付けられているのだが、それによれば、臨時・派遣雇用の仕事を受け入れることは、当人のキャリアにおいて後に期間の定めのない雇用のポジションを確保する可能性を減じないか、時にはわずかに高めることもある。しかし、こういった報告が意味するのは、臨時・派遣雇用の仕事が安定した雇用への足掛かりになっているということではなく、ただ単に若者には平均的な。たとえ臨時・派遣雇用の契約で仕事を始めても何とかして意向を果たしているということなのだ。

 臨時・派遣雇用の仕事は一部の労働者にとっては足掛かりかもしれないが、落とし穴になってしまう労働者もいる。ある研究によれば、教育レベルの髙いものの場合には機関の定めのある契約が期間の定めのない雇用のポジションにつながるが、若者や女性、教育レベルの低い労働者にとってはそうはならない。近年の推計ではヨーロッパのほぼすべての国で、ある1年間に臨時・派遣雇用で働いていた労働者で3年後にフルタイムで期間の定めのない契約で雇用されていたものは、半分にも満たなかった。

 「成人スキル調査」が示すところでは、臨時・派遣雇用で働く労働者は期間の定めのない雇用労働者と比べて、認知的スキルを集中して用いることが少なく、そのためにスキルが低下するリスクにさらされる可能性がある。この結果は社会的・情動的スキル、あるいは職業に特有のスキルにおいてはそれほど明確な差はなく、臨時・派遣雇用の労働者は期間の定めのない雇用契約の労働者と比べて就業中に学習することが多いが、自分が影響を及ぼしたり業務に置いて自由裁量の効く集中的に用いることが少ない。
 
 臨時・派遣雇用契約の労働者が職業訓練を受け難い状況だと、労働者の間の契約形態の違いによって、そのスキルの差が拡大することにつながりかねない。これが一部の労働者が不安定な職業から脱することができないもう一つの理由であると思われる。しかし、契約形態の違いが雇用主によって提供される職業訓練の恩恵に浴することができる可能性に及ぼす因果関係は測定が困難であり、それは生産性の低い労働者は、期間の定めのない雇用契約を得る可能性も、雇用主が提供する職業訓練を受けられる可能性も両方低いことによる。「国際成人力調査(PIAAC)」 に基づいた暫定的な分析が示すところでは、臨時・派遣雇用契約で働くことによって雇用主が提供する職業訓練を受けられる可能性は14%も減少する。

 若者は、期間の定めのない雇用よりも臨時・派遣雇用契約である可能性が高いので、経済危機によってウyケル影響が不均衡であった。臨時・派遣雇用契約は、企業によって需要が減少した差異の調整のために、まず最初に利用される。さらに若者は、たとえ期間の定めのない雇用契約である場合でも解雇の危険にさらされる可能性が高いのだが、それはたとえば後入先出の慣習によって、雇用保護法制(EPL)が一般には年齢の高い労働者を優先していることによる。

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