2007年12月11日

派遣マージン明示義務

今回の国会では地味に労働関係の法律がバンバン通っているような気がします。

労働契約法などはその典型だと思うのですが、それよりも私が重視しているのは、

派遣会社の派遣マージンの明示義務ができるという法律です。

一般労働者派遣事業ではおおよそ粗利益(つまりマージン)が3割程度だと

思うのですが、労働者の社会保険や福利厚生、営業マンの人件費や登録センター等の

事務所経費などをあわせると経常利益は多く場合3%程度ではないかと思います。

25%をきったらおそらく事業として成り立たないと思うのですが、派遣社員にとっては

派遣会社が非常に多く「天引き」しているという感覚を持っています。


私も03年前派遣会社の営業をやっていましたので少しはわかるのですが、

派遣業界は非常に苛烈な競争業界だと思います。既存の取引先を追い落として

新規で入っていくためには、出来るだけ多く足しげく通い、人間関係をつくり、

そして適宜おもしろい情報を提供していくことが求められます。えてして

派遣会社の営業マンは若いですが、そうした人が派遣社員をサポートしているのです。


今回の法律では、派遣会社のマージンを明記するように義務付けるというものです。

社会に大きなインパクトを与える法律だと思います。


派遣会社がどれくらいの粗利益を得ているのかを明確にするということで、派遣社員に

とっては派遣会社を選定するときの重要な要素となるはずです。特に理由も無く、

福利厚生も充実していないのにマージンが高かったりすれば、派遣社員からは

そっぽを向かれることになるでしょうし、現代のインターネットが普及している世の中に

あっては各社のマージンはすぐに白日の下となるでしょう。



派遣会社にとっては戦々恐々とした時代がやってくるはずですが、明確にマージンを

明示するならば、どのような経費がかかっているのかも正確に公表したほうがいいとも

いえます。派遣会社がなければ、派遣社員も働くことが出来ないわけである程度の

利益は得なければ事業として継続することができないからです。




ズバリ、派遣会社がとるべき今後の方向は、

財務諸表を分かりやすく派遣社員に解説するという流れだと思いますし、その中でどれだけ

充実した福利厚生を打ち出せるかが生き残れる要素になってくるのではないかと思います。



私はこれまで派遣社員の給与を能力給にすべきだと考えてきて、また雑誌などにも

書いてきているのですが、私のそうした考えからは今回の法律は違う方向にあるように思います。

一律にマージンを設定するわけではないと思いますが、派遣先企業が支払う額面はそれほど

替わるものではないと思いますし、負担を強いるのは派遣会社になってくると思います。

若干の給与アップや福利厚生の充実がなされるかもしれませんが、根本的に派遣社員の

ワークスタイルはかわらないと思います。



「なぜその時給で働いているのか」を明確にした働き方をしなければ、いつまでたっても

期間限定のヘルプで終ってしまいます。専門的な技能を持った人を本来は理念としていた

派遣というシステムであるので、やはりオランダ方式というか、同一労働同一賃金に

近い考え方で法整備が進んで欲しいと思います。


ただ、派遣社員にとってこれまでよりも環境は良くなることはいいことだと思います。

                                     情熱を胸にICON179
Posted by 藤井哲也 at 01:00│Comments(4)情熱(私の思い)
この記事へのコメント
興味深く拝見しました。
私は派遣で長く働いてきた経験のある31才の男です。派遣会社とのつきあいで感じるのは競合会社が信じられないくらい多くひしめいているにもかかわらず、業務効率の悪そうな企業、マージンの高そうな企業がいつまでたっても潰れないということです。

営業マンは得てして若くメール・電話応対や基本的なマナーがなっていない、あるいは登録会でも非効率的な時間・空間・労力・紙の使い方がされている企業がほとんどです。たまにマージン、業務効率、営業レベルの優れた派遣会社に出会ったとしても、営業さんのお給料がよくなかったりして他者に引き抜かれることも多いそうで…。

こうした現状に触れると、派遣会社の実態というのは質は低くても無知で弱い立場の労働者から高いマージンをとって営業の頭数を増やしレバレッジをかけた方が有利になるというような世界であるように思います。

人と企業のマッチングという本来の価値創造とは別のところ、つまりいかに企業とのコネをつくるか、いかに労働者を買い叩くかといったところで競争が行われているのだとすれば、その様な業界は日本経済全体にとってマイナスだと思います。
Posted by hal* at 2007年12月22日 21:42
hal 様

コメント有難うございます。

偽装で派遣をやっていた「エムクルー」というワーキングプアを対象とした派遣事業会社が訴えられたと雑誌で見たのですが、一件ソーシャルベンチャーと歌っている企業の多くも実は労働者を搾取しているだけなのかもしれません。

私個人的には派遣事業というものはある種必要不可欠であり、労働力の産業間移動を柔軟にすることや企業経営において景気の状況に合わせて調整弁となることは悪いことではないと思います。それを選択するのは労働者だからです。

しかしながら、一度下流になってしまえばそこから這い上がることが出来ないまま非正規社員を継続しなければならないという現状は問題だと思いますし改善していかねばならないと思います。

人と企業とのマッチングがやはり理想だと思うのですが現実問題としてはやはり再チャレンジ(死語?)できない社会環境にあっては、マッチング機能が
うまく機能しているとはいえないでしょう。

この件についてはブログに書きたいと思います。

                         情熱を胸に
Posted by ころすけころすけ at 2007年12月26日 01:11
こんな法律が討議されているなんて知りませんでした。派遣業を経営する私にとってとても身近なお話です。

ここ2、3年業界内は雨後の竹の子といった状態で、新規に会社設立され登録される派遣業や、請負いの規制強化にともなって、請負の業態で似非派遣を行ってきた業者が派遣契約への切り替えを迫られるなど、管理強化の風を受けて派遣業者は数の上で増加傾向にあります。
 規制緩和の現状を受けて、医療、建設、港湾、警備の4業種が禁止されている以外は、基本的に派遣事業が認可されていますので、当然企業側は正社員の採用抑制と派遣社員の採用増加へとつながっていきます。
 企業の支出で大きなウェイトを占めるのはいずこの会社、業界においても人件費でしょう。その人件費の削減と景気動向に応じたフレキシブルな雇用を可能にしたことで、景気回復に寄与したことは確かかも知れません。
もはや、一国の労働市場を考えているだけでは、今後の労働人口の減少の対策が取れない日本において、これからも労働者を取り巻く環境は変化し
続け、そこに発生する人材サービスのビジネスに商機はあると思います。

現状、企業も将来予測にたって計画的に企業経営を行うことが困難な状況が続いており、目先の需要は人事を介さずに現場の職場の担当者が派遣社員を増加することで対応することが、一般的になっています。一方、企業は新卒採用を増やすが、当世の若者もしたたかで、自分を活かせる職場を求めての転職には、抵抗を感じることも少なくなって来ているようです。いまだかつて経験のない、雇用と労働の新時代に入っているのだと感じます。

人材派遣は政府の許認可事業ですので、法律により育成されも監視縮小されることも意のままでしょう。
 私は今後、来年1年間で派遣会社は、2つの方向によって淘汰される年が始まると感じています。
 ひとつは、この12月に発表された、派遣業界最大手のスタッフサービスのリクルートへの経営譲渡です。海外の大資本に対抗できるナショナルブランドの維持は今や一社では困難で、広告媒体を中心に人材事業の最大手リクルートがひとつになったことは、インパクトのある出来事です。国内の労働人口を補うには海外からの労働者に頼らざるを得ない状況であり、規制緩和も徐々に進行するでしょう。国際化する企業の人材ニーズ、海外労働者のニーズに則したビジネス展開には、グローバルに人材サービスを手がける外資系資本の人材派遣会社がそのノウハウや情報量そして資金力といったスケールメリッ
トが大いにその優位性を発揮出来るでしょう。
 そしてもうひとつは、専門性です。派遣業者はおおよそ年間の売り上げが5000万円以下という業者が全体の約9割近くを占めていて、ほとんどが中小零細事業であるといえます。派遣会社は、社長とスタッフ数名で運営している会社がほとんどです。これらの業者が生き残る道は、地元密着で地元の雇用ニーズに則した地域においてシェアを上げるか、業種業態にこだわり特化してその専門性を上げるかの二方向或いは、両者を巧みにミックスしたものである必要があるのです。

 いづれにせよ、大資本への統合か、専門性や地域性にこだわった独自性の強化を図るのかの二つの大きな時代のウネリの中にあると考えます。

 乱世にこそ好機あり。プラス思考で生き抜きます!! 





 


「出る杭は打たれる」といいますが、
Posted by トーマスぱぱ at 2007年12月30日 13:53
トーマスぱぱ様

)いづれにせよ、大資本への統合か、専門性や地域性にこだわった
)独自性の強化を図るのかの二つの大きな時代のウネリの中にある
)と考えます。

いつもありがとうございます!私もそのように思います!

これからの時代は淘汰の時代です。大きいものが小さいものを

吸収して更に大きくなっていく、大きくなった組織においては

身動きとれず、小さい市場には専門性が生じます。そこには

専門的な事業会社が存在する余地が生まれてきます。いかに

専門性を築き、そして維持していくことが出来るのかが最大の

ポイントだと思います!

                       情熱を胸に
Posted by ころすけころすけ at 2008年01月20日 19:17
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