2020年10月29日

神奈川県主催の就職氷河期世代採用・活用セミナーに登壇しました!



 先日、オンライン開催されました神奈川県主催の就職氷河期世代採用・活用セミナーに講師として登壇させて頂きました。
 大変貴重な機会を頂戴し、ご関係者の皆様に感謝申し上げます。
 もう一度、来月に同じ神奈川県さんのイベントに登壇をさせて頂くことになっております。頑張ります。






 本拠である京都府・滋賀県だけではなく、各所から氷河期世代支援に関する事柄について、ご相談を頂戴しております。
 誠にありがたく思っております。

 引き続き、氷河期世代の活躍推進に関して、取り組んでいこうと思っております。
 就職氷河期世代支援に関するセミナー講師、寄稿執筆などのご依頼がございましたら、
 ぜひ積極的に力を入れて取り組んでいきますので、お問い合わせくださいませ。
 会社ホームページのお問い合わせからご連絡して頂いても大丈夫です。


藤井哲也

   


Posted by 藤井哲也 at 13:51Comments(0)就職氷河期世代活躍

2020年06月29日

日本人材マネジメント協会 人事制度研究会が無事終わりました!



先日ご案内しておりました「日本人材マネジメント協会 人事制度研究会」様主催のウェブセミナー講師の大役、無事終わることができました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

就職氷河期問題を科学的に整理・分析する


資料作成に2、3日かかったのですが、改めて概念を整理する中で、自分なりにも気づくことが多かったように思います。
思うことは、日本の「公共職業訓練」制度の貧弱さです。改めてこのことはブログにまとめたいと思いますが、国際的にあまりにも貧弱すぎて、どうなんだろうかと思うことが多いです。

ちょうど、コロナの影響で失業者や隠れ失業状態(雇用調整助成金受給者など)の方が増えています。
でももったいないです。もし仕事をしていない時期に、国や自治体が公共職業訓練を実施して、さらに能力開発やキャリアのスケールアップをすることができるとしたなら、会社も社会も大きくアップデートしていける機会になると思うのですが。今は単に休業補償的な給付金や、助成金で止まってしまっています。

就職氷河期世代支援に関しては、しがジョブパークに週1、2日だけ勤めさせていただく中で、取り組みを進めています。
ようやくコロナ自粛の影響も弱まり始め、これからやっと氷河期世代支援に取り組めるかなぁと感じています。
次年度の予算編成に向けた「骨太方針」もそろそろ策定されます。就職氷河期世代支援が実効性を持つことができるように、より良い政策が盛り込まれるようにと願っています。私も関係者に連絡を取り、少しでも自分の思いが政策に反映してもらえるように頑張っていこうと思っています。


藤井哲也






  


Posted by 藤井哲也 at 11:11Comments(0)就職氷河期世代活躍

2020年06月02日

日本人材マネジメント協会 人事制度研究会のお知らせ



この度、延期になっておりました「日本人材マネジメント協会 人事制度研究会」での登壇予定が、オンラインで開催されることとなりました。話題は「就職氷河期世代」についてです。

企業人事の方、経営者の方、就職氷河期世代支援に関わる自治体や各種団体の方々、そのほか、就職氷河期世代に興味関心がある方々が対象となります。参加費は無料です。もし良ければ、「日本人材マネジメント協会 人事制度研究会」のfacebook上でのイベントページ、または「日本人材マネジメント協会」のウェブサイトからお申し込みしていただくことが可能ですので、ぜひご参加をいただけましたら幸いです。

▶︎「日本人材マネジメント協会ウェブサイト」にリンク
▶︎「フェイスブックのイベントページ」にリンク




ーーー

第51回 人事制度研究会のご案内

日本人材マネジメント協会 人事制度研究会では、人事制度(等級制度、報酬制度、評価制度)の構築や運用、管理職評価スキルなどの人事評価制度領域をはじめ、キャリア、人材育成、組織マネジメントなど関連する領域もターゲットとしております。メンバー発表によるケース演習、ゲストスピーカー講演、ディスカッション等を通じてこうした領域についての知見を深めています。
第51回人事制度研究会は以下の日時にて行います。

■2020年6月25日(木)19:00~21:00

■会 場:Zoomを使用したリモート開催です。
参加お申込み頂いたみなさまには別途アクセス先をご連絡いたします。

■内 容:
テーマ: 『就職氷河期問題を科学的に整理・分析する』
不本意非正規労働者が多いとされる就職氷河期世代。このまま当該世代が老齢期を迎えると10兆円単位の社会保障経費が必要になると言われています。2020年度から国を挙げて3年間の集中支援が始まります。そこで就職氷河期世代問題を科学的に整理、分析し、雇用の受け皿である企業担当者や施策立案に関わる方、学識者を交えて、国の政策立案や自治体の施策立案、企業の人事労務の新たな取組に資する意見交換を、行います。

✻ 主催者・ファシリテーター:岡田英之さん(JSHRM執行役員・人事制度研究会主催)

✻ スピーカー:藤井哲也さん(株式会社パブリックX 代表取締役、就職氷河期世代支援専門家)

藤井哲也(ふじい・てつや)
2003年に会社創業(現在のパブリックX)。ジョブカフェ事業や職業訓練校事業の受託、企業向けの採用支援、有料職業紹介のほか、創業支援など幅広く事業を展開。2011年から2019年まで地方議員として中核市の雇用労政などにも注力。2019年から2020年にかけて民間企業の行政渉外担当も兼任。京都大学公共政策大学院修了。1978年生まれ。「就職氷河期世代を戦力化する人事実務、マネジメント」(「人事実務」2019年12月号)など寄稿多数。

■定 員:10名

■参加費用:無料

*参加希望の方は、6月20日(土)までにFacebook参加フラグか下記URLより申込みお願い致します。
http://www.jshrm.org/jisyuken/gaiyou/jinji



  

Posted by 藤井哲也 at 10:38Comments(0)就職氷河期世代活躍

2020年05月18日

地方自治体における就職氷河期世代支援の進め方(3)

本記事は、時事通信社が発行する行政機関向け雑誌「地方行政」に3回にわたり掲載された記事を基に、若干の加筆修正を行った上で再編集したものです。
寄稿した原文記事については、PublicLabに掲載頂いておりますので、そちらをご覧ください。なお原文記事の掲載時期は、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発出前の3月中旬から4月上旬です。


 ◇  ◇  ◇

11.政策提言

就職氷河期世代の現状や先進事例、課題などを取り上げてきました。本年から集中支援が始まる就職氷河期世代支援について、そうした課題等を踏まえた政策提言を行います。

提言① 書類選考を必要としないマッチング機会の創出
就職氷河期世代で不本意に非正規を継続してきた方や無業者にとって、一般的には就職に有利になる職務経歴を見掛けることはあまりありません。そこで、書類選考を必要としない人物重視のマッチング機会を設けることを提言します。関東地方の自治体での合同企業説明会(合説)で、民間事業者が中間に入り応募を希望する企業へ無料職業紹介を行い大きな成果を挙げた実績や、関西地方の自治体でいわゆる「逆合説」を行い、求職者側がブースを持ち企業が回り、職務経歴に依らない、自身がPRしたいことを述べる形式のイベントを開催し、話題になった事例が見られます。書類選考がないというコンセプトで、求職者側にとってもマッチングイベントへの参加ハードルは低くなります(「支援事業者へのインタビュー」参照)。
また、マッチングの際にはカウンセラーなどのリコメンド(推薦)があると支援対象者にとっても、また企業にとっても安心です。ハイクラス人材の採用ではリファレンスサービス(採用しようとする人材をよく知る方からの参照情報の利用)が近年よく用いられています。この考え方を就職氷河期世代支援にも活用したいところです。

提言② 職務経験にとらわれないジョブカウンセリングと職能評価の推進
ジョブスキルは仕事以外の経験からも身に付けられることが分かってきました。越境的学習効果といわれ、例えば子育てに関わることで、マルチタスク管理力や対人コミュニケーション力などマネジメントに求められるスキルを獲得できたり、災害ボランティアの経験を積むことで、リスク管理力や判断力を身に付けられたりします。ジョブカードは職務経験を中心に記載するものとなっています。そのため、職務外の経験も記載・評価する第二のジョブカードのようなシートを独自に作成することを提言します。職務上の経験からは就労支援で有利となる事柄が少なくても、それ以外の経験をキャリアカウンセラーが丁寧にヒアリングする中で、発揮が期待される職能を見つけられるはずです。そうしたことを記載するシートを作成し、求人企業や職場体験の受け入れ企業へのPRに活用することができるはずです。






提言③ 潜在的な求職者を掘り起こすイベントの実施
合説やミニ合説、セミナーなどのイベントは、支援対象者にとって敷居が高いと感じることもあります。筆者が知る限り、行政が開催している〝いかにも感〟があるイベントは、「ダサくて参加できない」と考えている方が相当数います。古風なイベントではなく、2020年代の現代的な面白い、スマートなイベントに転換していかないといけません。関西のある自治体では新型コロナウイルスの影響で開催延期となりましたが、会場に設置したダーツで訪問先企業を決める、ゲーム性のあるマッチングイベントを企画していました。その他、ラジオDJを招いてどうすればその人のようにうまく話ができるかを学ぶセミナーや、トランプやゲームなどのツールを用いて楽しみながらキャリアプラン作りや業界研究ができるセミナーなどを実施している自治体もあります。イベントを案内するチラシやホームページのデザインにも、意識して注意を払いたいところです。

提言④ 企業や経済団体に対する就職氷河期世代採用・育成のノウハウ提供、事例共有
本人にとっても、企業にとっても就職は入り口にすぎません。組織の中で期待される役割を果たしていくことも求められます。就職氷河期世代をどのようにマネジメント、育成すればよいのかという情報やノウハウはまだ社会的にあまり共有されておらず、就職氷河期世代の採用に躊躇する要因にもなっています。せっかく採用しても活躍できなかったりすぐに退職してしまったりするようでは本人、企業双方にとってマイナスです。
そこで、企業向けのセミナーなどを開催し、就職氷河期世代の採用・活用の事例紹介、拡充された各種助成金などの施策紹介、職場体験の協力企業による講話などを通じて、事業の普及啓発に努めることを提言します。企業開拓員やコーディネーターには、できればキャリア形成に苦労してきた当事者世代を充てたいところです。企業人事担当者への説得力が違うと考えます。

提言⑤ 隣接都道府県・市町村との連携の推進
従来の就労支援でも県域を越えた自治体間、または隣接市町村との連携が求められてきました。今回の就職氷河期世代支援においても基本的には都道府県単位の支援プラットフォームを形成し、対策を講じていくことになります。就職氷河期世代支援に限ったことではありませんが、生活支援・就労支援において、隣接都道府県、市町村との連携の推進を図る機会・場が設けられることが好ましいと考えます。

提言⑥ 地域就職氷河期世代支援加速化交付金の有効活用
事業費の75%が交付金によって措置される「地域就職氷河期世代支援加速化交付金」が当初30億円という規模で創設されました。この交付金の詳細が明らかになったのが本年2月ごろとなり、2020年度当初予算の編成には間に合わなかった自治体が多かったと聞き及びます。しかし、年度途中に予算枠内での財源組み替えを行えば、余剰金を活用した就職氷河期世代支援の拡充を行うことができるのではないでしょうか。
国はこの新型交付金を活用した事業として、「地域における就職氷河期世代の実態調査・ニーズ調査」や、「就労活動のネックになる経済的負担の軽減(就職活動に要する交通費支給や、奨学金返還支援等)」などを一例に挙げています(図表1)。幅広く活用することができる財源でもあり、筆者としては以下に挙げる事業等も正社員転換・待遇改善に資すると考えます。





12.結び

就職氷河期世代支援は、2020年度から3年間を集中支援期間として取り組まれることとなっています。

この世代が老齢期に入る2040年代に、この問題はより顕在化してくるでしょう。国や自治体は、多額の社会保障経費を支出しなければならないと多くの機関や識者が推測しています。将来起きる大きな問題を予防的に解決できるとすれば、この3年間をおいて他に時期はありません。この世代は現下のところ40歳前後のキャリアの転機にあり、年齢的に今後のキャリア形成を考えると残された時間はあまりありません。

しかし、こうした最中に新型コロナウィルス感染拡大により、雇用環境や働き方に大きく影響が出ています。
コロナショックを超えて、再び就職氷河期が生まれないように、そして現にいる就職氷河期世代のための支援が1日も早く本格的に動き出し、一人ひとりの支援対象者にとっても意義ある施策となることを強く願っています。

 ◇  ◇  ◇


藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリック・クロス代表取締役。2003年の創業以来、若年層・就職氷河期世代の就労支援に従事。2011年より大津市議会議員(滋賀県)を2期務め、地域の雇用労政や産業振興に注力して活動。株式会社ミクシィの社長室渉外担当など歴任。著書・寄稿に「就職氷河期世代の非正規ミドルを戦力化する 人事実務、マネジメント」(2019年)など多数。京都大公共政策大学院修了。1978年生まれ。  


Posted by 藤井哲也 at 00:02Comments(1)就職氷河期世代活躍

2020年05月17日

地方自治体における就職氷河期世代支援の進め方(2)

本記事は、時事通信社が発行する行政機関向け雑誌「地方行政」に3回にわたり掲載された記事を基に、若干の加筆修正を行った上で再編集したものです。
寄稿した原文記事については、PublicLabに掲載頂いておりますので、そちらをご覧ください。なお原文記事の掲載時期は、新型コロナウィルス感染拡大に伴う緊急事態宣言発出前の3月中旬から4月上旬です。

 ◇  ◇  ◇


6.就職氷河期世代を活用することによって得られるメリット

就職氷河期世代支援を進めるに当たり、行政・自治体が積極的に動いても、民間側の反応があまり良くなければ施策の実効性は低いものとなります。自治体で採用できる就職氷河期世代はたかが数人で、雇用の受け皿の大半を占める民間企業の理解や協力がなければ、就職氷河期世代支援は絵に描いた餅で終わってしまいます。民間企業の中でも全労働者の7割が働く中小企業まで、いかにして施策効果を浸透させることができるかが、重要なポイントになってきます。
そうしたことから、本稿は自治体向けの記事ではあるものの、民間企業にとって就職氷河期世代を採用することでどのようなメリットがあるのかを簡単にまとめておきたいと考えます。

①深刻な人手不足の解消
民間企業における深刻な人手不足の解消に、就職氷河期世代は十分に活用できる点がメリットとして挙げられます。業種や職種によっては求人難が続いています。就職氷河期世代にも多様な人材がいて、それぞれの特性に合わせてマッチした職場も探せば見つかるはずです。寡黙で人付き合いが苦手な方であっても、黙々と一つのことを成し遂げる熟練を要する仕事とマッチしたケースや、しばらく体調を崩し仕事をしていなくても大変思いやりがあって福祉の仕事にはまる方もおられます。キャリアカウンセラー次第ではありますが、しっかりと支援対象者の希望や特性、経験を把握し、職へとつなげていくことが必要となります。

②組織における多様性の推進
多様な組織ほど面白いアイデアが生まれ、独創的な商品やサービスなどが展開されやすいといわれています。イノベーションは異端から生じるともされ、会社に内密に調査研究を始めて偶然大ヒットした商品も世の中に多くありますし、近年ではオープンイノベーションを創発するために、社内外のさまざまな交流の促進が進められています。女性の活用においても商品だけではなく、働き方や組織マネジメントの在り方などにまで変化を生み出しています。就職氷河期世代で、不本意に非正規雇用を継続してきた方や無業状態にあった方それぞれの個性や経験を活かし、組織の多様化を進めることができるなら、その組織にとってプラスになる効果を期待できるはずです。

③組織内での人口構成の調整
現在40歳前後を迎える就職氷河期世代は採用活動も低調であったことから、組織内の人員構成で手薄になっていることが散見されます。これまで非正規で働いてきた方の中にも、有資格者や貴重な職務経験を積んできた方はいます。その中には子育てや家事、介護などと両立した働き方が実現できるなら正社員として働きたいという方も見掛けることができます。また仮に他企業で正社員で働いていたとしても、待遇面で非正規雇用者とあまり変わらないこともあります。正社員としてより良い処遇を準備できるなら、組織内での人口構成のアンバランスを解消できるはずです。
現在、就職氷河期世代の採用活動は緒に就いたばかりです。民間企業ではあまり事例は見られないものの、多くの自治体がすでに職員採用を進めています。当該世代の採用や職場での仕事ぶりや成果を積極的に社会に発信することが、民間企業にとって就職氷河期世代の採用機運の醸成につながります。


7.就職氷河期世代支援・官民連携の取り組み

昨年11月、政府は就職氷河期世代支援を官民連携で進めるべく、「就職氷河期世代支援の推進に向けた全国プラットフォーム」を設立し、第1回会合を開催しました。西村康稔全世代型社会保障改革担当大臣が議長となり、関係府省の大臣や、愛知県の大村秀章知事、山口県宇部市の久保田后子市長といった官サイドと、経団連会長や日本商工会議所会頭、全国中小企業団体中央会会長など民サイドの関係者のほか、支援事業者や有識者によって構成される会議体です。就職氷河期世代等への支援に係る課題やニーズについての認識を共有し、今後の支援策等について意見交換することを通じ、官民が協働して就職氷河期世代等の支援に関する社会の関心を高め、社会全体で取り組む機運を醸成し、支援の実効性を高めることを目的としています。

先にも触れたように、就職氷河期世代支援、具体的には不本意に非正規雇用を継続してきた方の正社員就職や、長期無業者・ひきこもり者の就労支援にとって、実効性を確保できるかは官民連携の推進次第といっても過言ではありません。単に官民連携プラットフォームを形成したから施策が推進されるというものではなく、当事者、とりわけ行政側がどれだけ熱意をもって、この社会課題に取り組んでいけるのかが重要となってくると考えます。

「全国プラットフォーム」は、実質的には政府による本施策や地方自治体に向けた号砲的な意味合いがあると考えてよいでしょう。

昨年9月、厚生労働省は、「就職氷河期世代活躍支援都道府県プラットフォーム設置要領(モデル都道府県)」を各地の労働局や都道府県に通知し、都道府県単位で官民連携プラットフォームの設置を進めてきました。愛知県や大阪府、熊本県、福岡県などでモデル的に取り組みが始められており、関係団体の役割調整や2020年度における予算協議、進捗管理方法の調整、府県単位の計画策定などが実施されてきました。

また、市町村単位のプラットフォームの設置も同時に通知されています。市町村など基礎自治体に期待される役割としては、ハローワークや都道府県、経済団体や自立支援機関、地域若者サポートステーション等と連携して、就職氷河期世代のうち、特に長期無業の方やひきこもりの状態の方を対象とした支援を行うものとなっています。支援を通じて得た事例共有や、個別ケースの具体的な支援プラン作成に関する情報共有、当該地域における対応方針の検討等を行う場としての機能も求められています。


8.先行モデル地域の取り組み(愛知県・大阪府の事例)

モデル地域である愛知県や大阪府などでは、すでに先行的に取り組みが進められています。

愛知県では「事業計画」が策定され、重要業績評価指標として、「就職氷河期世代の希望に応じた支援を通じ、正規雇用者を1万7700人(1年間で5900人)増やすことを目標(値)とする」方針が示され、就職氷河期世代の支援ニーズの調査、具体的な施策の検討や実施スケジュールをまとめ、公表しています。また大阪府においても事業計画の策定を今年度中に終え、2020年度から本格展開するための準備が進められています。

今回、大阪府商工労働部に伺い、取り組み状況や今後の見通しを尋ねました。現在、大阪府では労働局や経済団体、ポリテクセンターなどと連携しながら、以前から運営している総合就業支援拠点「OSAKAしごとフィールド」で提供している、就労支援や企業向け情報提供等のサービスのノウハウを最大限に生かした支援事業スキームを策定しました(写真)。


OSAKAしごとフィールドのエントランス

担当者は、「大阪府における就職氷河期世代支援では、2020年度は国が新たに設けた『地域就職氷河期世代支援加速化交付金』を活用します。女性や高齢者、障がい者の就労支援も含めた全体の予算は約6500万円、このうち就職氷河期世代支援には約1200万円を予定しています。当初は地方創生交付金を充当しようと考えておりましたが、ここに国が75%を補助する加速化交付金を充てようと考えています。

また、キャリアカウンセリングに力を入れていることが特長です。直接雇用でキャリアカウンセラーを15人確保し、それ以外に企業開拓員にも動いてもらいます。キャリアカウンセラーによる対象者への丁寧なフォローアップに努めており、職場体験やミニ合説(合同説明会)にも時に同行するなど、伴走型の支援を行っています。個々人の適性を見極め、企業開拓員などとの情報共有により、採用してくださる企業のニーズと合致するマッチングを行い、就職後の育成や定着、活躍までも見据えた取り組みをしていきたいと考えています」と答えてくださいました。(図表)。



これまで、就職困難者のために寄り添って支援してきた知見の蓄積が大阪の取り組みには見られ、こうしたベースがなければ、一朝一夕に同様の施策を進めることは難しいかもしれません。ただ、従来の丁寧な就労支援の取り組みを就職氷河期世代にも広げることで、自然と成果は上がるだろうと取材を通じて感じました。確かに、産業構造や雇用慣習、県域の広さなども都道府県によって異なるものと考えられます。官民連携プラットフォームによる協議と併せて、地域特性に応じた支援の在り方を検討し、加速化交付金を活用しつつ、進めていくことが求められます。

なお、「OSAKAしごとフィールド」では、子育て世代向けの就労支援として連携する民間の保育所も同一施設内に設置されており、子育て中の保護者でも就職活動ができる環境を整備していたり、高齢者や障がい者就労支援の窓口、若者サポートステーションやハローワークも同一フロアにあったりするなど、支援人員のセクションを超えた連携や企業情報の共有が図られていました。


9.基礎自治体の取り組み

市町村単位では、既存の施策の枠内で事業が進められることが多いようです。筆者が8年間、議員を務めていた大津市を例にとれば、福祉と就労の連携を図るため、主に生活困窮者を対象とした職業紹介コーナーを労働局の協力の下、市役所内に設置してきました。市役所の福祉部局に相談に来られた方が、そのまま職業紹介コーナーに出向き、就労のために必要なアドバイスや、求人情報の提供・職業紹介サービスを受けることができる仕組みとなっています。

また同じ滋賀県内の野洲市では生活困窮者自立支援事業の一環として、手厚い就労支援事業を展開してきました。市民生活相談課が市役所内に設置された社会福祉協議会や関係部局と連携を図り、個々人の悩みや問題に対応し、「おせっかいする」ことを合言葉として伴走型の生活・就労支援に取り組んできました。この取り組みは「生活困窮者自立促進支援モデル事業」となっています。

こうした基礎自治体での既存の生活・就労支援の取り組みや、地域若者サポートステーションなどでの事業を通じて、これまでも長期無業者やひきこもり状態の方を対象とした支援施策が進められてきましたが、今後は都道府県との連携や、国が進める新たな施策、加速化交付金の活用などにより、なお一層の推進が期待されます。


10.施策推進における課題

就職氷河期世代の現状や本年4月から始まる支援の概要について取り上げ、施策の実効性を高めるための官民連携の在り方を取り上げてきました。就職氷河期世代支援の課題を取りまとめ、次回以降に掲載する幾つかの政策提言につなげたいと思います。

課題① 非正規雇用歴が長い方や長期無業状態の方へのジョブカウンセリングやマッチング機会の創出
非正規雇用が長かった方や長期無業状態の方の、職務経歴書やジョブカードは、企業にとって魅力を感じる部分があまりなく、また本人にとってもそれらへの記入が自信や自己効力感を損なう機会になりかねません。ジョブカウンセリングやジョブマッチングの在り方をどうすべきかは重要な課題と考えられます。

課題② 受け入れ企業への理解や協力の推進
大阪府では専門の企業開拓員の方が、企業に対して理解促進を進めているということでした。やはり受け皿となる民間企業や経済団体の理解と協力なくして、支援施策の実効性は担保できないと考えられます。どのような点に着目して、行政や自治体は民間セクターに働き掛けるべきでしょうか。

課題③ 公共職業訓練や民間委託業者で実施される職業訓練
パソコンスキルや簡単な資格取得は、就職氷河期以降の世代はすでに基本的に身に付けています。国の就職氷河期世代支援プログラムにおいても、ソサエティー5・0時代を見据えたスキル獲得機会の提供などが掲げられています。非正規雇用が長い方や長期無業状態の方にとって、どのような職業訓練がなされるべきかも検討課題として挙げられます。

課題④ 県域をまたいだ自治体間の連携
自民党政務調査会の雇用問題調査会内に設置された、就職氷河期世代支援プロジェクトチーム2でも議論になっていたように思われますが、県域をまたいだ自治体間の連携も検討されなければなりません。就職氷河期世代支援は地方創生とも関連することから、東京一極集中の是正の政策枠内において東京から地方へ、または地方中枢都市から周辺市町村への人の流れも想定されます。

課題⑤ 地域就職氷河期世代支援加速化交付金の活用
2019年度補正予算で、自治体が就職氷河期世代支援のために用いることができる新たな交付金が創設されました。本年度予算の編成や議会審議に間に合わなかった自治体も多くあることから、次回以降で幾つかの有効な活用案を提示したいと考えています。

(続く)

  ◇  ◇  ◇

藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリック・クロス代表取締役。2003年の創業以来、若年層・就職氷河期世代の就労支援に従事。2011年より大津市議会議員(滋賀県)を2期務め、地域の雇用労政や産業振興に注力して活動。株式会社ミクシィの社長室渉外担当など歴任。著書・寄稿に「就職氷河期世代の非正規ミドルを戦力化する 人事実務、マネジメント」(2019年)など多数。京都大公共政策大学院修了。1978年生まれ。  


Posted by 藤井哲也 at 01:01Comments(0)就職氷河期世代活躍