2018年07月10日

個人にとってなぜ「働き方改革」は必要か?



「働き方改革」。

この政策の目的は、男性も女性も、また高齢者も働きやすい社会環境、
職場環境を推進して、社会保障給付費の上昇を抑えることにあると
言えます。

これまでの男性稼ぎ頭モデルでは、男が外で精一杯働き、女が家で
家事や育児に頑張るというのが一般的でしたが、1985年以後、
こうしたモデルが変わってきました。男女共同参画推進法の影響は
もちろんありますが、婚姻率の低下、晩婚化なども一因にあると
思います。

ともあれ、夫婦共稼ぎモデル、もしくは男女共同活躍が求められる
時代になってきました。

働き方改革とは言え、その内実は「長時間労働の是正」に収斂される
ような気がします。仕事の属人化を改め、また長時間労働せざるを得ない
タスク管理のあり方を見直し、また正規、非正規とも同一労働同一賃金を
行い、働き方に関わらず、誰もが働きやすい環境づくりを
進めようとするものです。

こうした「働き方改革」は、一義的には日本国の財政にとっては
プラスの影響があると思われますが、組織にとっては短期的には
負担になるはずです。しかし生産性を向上させることができたらならば
こうした働き方改革は組織においても、中長期的にはプラスに働くはずです。

対して、個人にとってこの「働き方改革」はプラスになるのでしょうか?

結論から言えば、私はプラスになると考えます。
それは、先のブログ記事にも書いてきたように、これからはどんどん
機械に仕事が置き換えられてくる時代がやってきます。
そうした時代に備えて、人間らしい感性や感覚を磨くために、
仕事以外の様々な社会経験を積み増していくことが、仕事の生産性を
高める為にも大変重要になってくると考えるからです。

早く帰って、家族や自分の時間を増やし、仕事にもつながるような
様々な経験を積み重ねることができるならば、きっと個人は次の激動の
時代においてもパフォーマンスを発揮できると思います。

リンダ・グラットン氏(ロンドンビジネススクール教授)の著書、
『ライフ・シフト』では、これからは個人にとって「リクリエーション」のために
余暇を使うのではなく、「リ・クリエーション」のための学習・経験に、
使わないといけないと述べています。


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働き方改革で、仕事時間が減ったとしても、余計に創出できた自分の時間
を無為に過ごしては意味がありません。リカレント教育(生涯学習)が
ようやく日本でもその重要性が認識されてきましたが、やはりAI時代に
備えた感性磨きや、様々な社会活動経験を行うことが、
必要になってくるのだと思います。


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Posted by 藤井哲也 at 15:10Comments(0)情熱(私の思い)

2018年07月08日

AIに勝てる人材の可能性(5)



先の記事で取り上げた井上氏の「人工知能と経済の未来」には
「汎用AI」が普及し始めても当分の間は次の3つの分類の
仕事は残るだろうと考えられています。

・クリエイティビティの仕事: 小説を書く、映画を撮る、発明する等
・マネジメントの仕事: 工場店舗管理、企業経営、人事管理等
・ホスピタリティの仕事: 弁護士、看護師、保育士、インストラクタ等


私もこの考えに共感します。
逆に言えば、これら以外の仕事は、ほぼ淘汰されてしまうといっても
過言ではないかも知れません。少なくとも生活していける基盤を
維持できる収入を得られる仕事ではなくなっていると考えます。
(副業か趣味かといった程度ではないでしょうか)

言語の壁もおそらく超えるはずです。
もうすでに自動即時通訳・翻訳が実現しつつある中で、
日常会話をストレスなく言語間の壁を越えて、コミュニケーションできる
社会は2030年代には訪れるだろうと思います。

失業率はAIの普及に時間が要するとはいえ、いまよりも
確実に増えていくはずですし、貧しい人たちはAIが供給する
コモディティに囲まれて生涯を生きることになるかもしれません。


もしそうした時代に、AIに勝てる人材像を示すならば、
「人間性」「芸術性・感性・美的感覚」を持つ人材であることだと思います。

人の心に快適性や幸福の感情を与える事ができる人、
どのようなことをその人が考えているのかを、周囲の状況などを
踏まえて判断し、人間らしいサービスを提供できる人。
オリジナリティあふれる企画を練れる人、場所やシーンを演出できる人。
またはAIや人間や仕事を管理できる人。

そんな人が、AI時代に勝ち残る人だと考えます。
そしてそうなるため、すべきことは「機械学習できない越境型の経験」
だと提案します。

つまり、仕事だけではなく、趣味や社会的活動、場合によっては
介護や子育てといった仕事以外の経験から、人間の心の機微を
感じ取ったり、類推の幅を広げられたり、または特化型AIに負けないように
分野横断型の知識や経験をして、それらを横断的に活用した創造性を
磨き上げることだと考えます。

仕事のスキルは、AIに置き換えられる、代替可能なものであったとしても
感性などを組み合わせることで、AIには置き換えられない、価値を
創造することができるはずです。

私は大学院で子育てスキルはマネジメントスキル向上に資するという
研究を行い、その仮説が支持される調査研究を進める事ができました。
これは仕事以外の経験が、本業である仕事スキルの向上にも寄与する
ということが明らかになったものです。
そしてその要因も現在分析を進めていますが、「視野の拡大」
「類推による問題解決」が大きな要素であると考えられます。


子どもが勉強をやりたがらない、なぜだろう?(私もそうでしたが…)
部下が仕事にモチベーションがあがらないが、子育て経験から
使える技はないだろうか?

消防団の活動はめんどうだ。でもなぜあんなにみんながんばるんだろう。
硬直型の組織構造の原因を考えることで、自分の職場の
問題改善につなげることはできないだろうか。

今度の休日は、家族で海が見えるところに行きたい。
その場所で新しいビジネスを思い浮かぶかもしれないし、
家族全体のワークライフバランスの充実を通じて、
家族や子どもから、もしくはレストランのウェイターさんから
何かを学ぶかもしれません。


これからのAI第1世代の荒波を超えるために、
働く人に求められることは、「仕事以外の経験を積む」
ということだと考えます。

そして同時に仕事以外の経験を仕事に活かすためには
日常的に、類推の力を養っておく必要があります。
これには自分の様々な経験を内省する機会が重要ですし、
他者からのフィードバックも大切になってきます。

そうした試行錯誤や、実践活動の繰り返しによって
AI時代にあっても、生産性を維持し、豊かな生き方を
実現できるようになると思います。

子ども時代はいろんな経験をしようと考えていたのに
いまはやっていないのであれば、ぜひ今日は違う明日の
スケジュールを考えてみる必要があると思います。
そして得た経験を自分や家族に話しして、
なんらかの会話をすることが重要になってくると思います。


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Posted by 藤井哲也 at 13:16Comments(0)情熱(私の思い)

2018年07月07日

AIに勝てる人材の可能性(4)



「消費」は主に人間で行うものである以上、それほど変動は
ないと考えられます。
 
「生産」は単純労働や機械学習によって行える事柄は
ほとんどがAIにとって代わられるはずです。
単純労働の中には、税理士などが行う入力作業も
含まれるでしょうし、コンビニやスーパーのレジも含まれる
はずです。

オックスフォード大学のオズボーン教授による「雇用の未来」
という著書は、今後20年程度でなくなる職種が示されたこと
で有名ですが、その中には、レジ係(97%)、コック(96%)
受付係(96%)、弁護士助手(94%)、ホテルフロント(94%)
ウェイター(94%)、会計士(94%)、保険販売代理員(92%)
バス運転手(89%)、警備員(84%)、理髪師(80%)、
皿洗い(77%)などの職種が高い確率で消滅するだろうと
しています。

これは笑い事でも戯言でもなく、私自身も実際にそう感じます。
おそらく機械学習で行える上記仕事の多くはなくなるはずです。

単純作業や機械学習によって支えられる仕事の大半は、
AIが担う事ができるようになるなら、生産性は飛躍的に高く
なるはずです。つまり安いコストで、商品やサービスを提供できる
ようになるからです。そうした商品やサービスの「価値」は
相対的に低くなる(廉価)はずです。
逆に、相対的に価値が高まるのは、AIができないような
生産活動によって生み出される商品やサービスであるはずです。

これはある意味、豊かさの格差の助長を生み出します。
お金を持たない人は、AIが提供するサービスを利用し、
お金を持つ人は、AIが提供できないような感性豊かで
人間らしいサービスを享受することができると言えます。
機械的な世界で生きる人たちと、感性豊かな世界で生きる人たち
との間に格差が生まれるのではないでしょうか。
これは「幸福の格差」といってもいいかもしれません。

味気ないコモデティの中で過ごす生活と、人間性を感じられる
オリジナリティの中で過ごす生活では、その生き甲斐に大きな
格差が生じるような気がします。
そしてその格差は、ピケティがいうように、資産課税が進められ
ない限り、広がる一方であると思われます。
それは、汎用AIによって仕事が奪われる労働者の人にとっては、
逆転不可能な時代の到来になってしまうかもしれません。
1990年代前半にパソコンやインターネットへ順応できず、
職場を去らざるを得なかった(リストラされた)おっさんらの
二の舞が、再び起こり得るのだと思います。


いずれにしても、2030年といえば、もう、たった10年先のことです。
今から10年少し前といえば、2006年、2007年のリーマンショックの
時代ですが、あっという間に、そうした時代が来ると言えます。
仕事の能力や、子どもの教育においても、いまから十分に備えておく
必要があると考えます。

今からどのようなことに取り組むべきなのでしょうか。
私自身が最もお伝えしたかったことを最後にまとめたいと思います。


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Posted by 藤井哲也 at 12:13Comments(0)情熱(私の思い)

2018年07月06日

AIに勝てる人材の可能性(3)



「人工知能と経済の未来」(井上智洋、文春新書、2016)から気になる
箇所を転載させて頂きます。

 今から15年後の2030年くらいには汎用AIが出現しているものと
 予測しています。私もその予想を支持しますが、全ての知性の面で
 AIが人間並みかそれ以上になるのは難しいだろうと思っています。
 前章でも述べましたが、「大部分の知性」と「全ての知性」では、
 天と地ほどの開きがあります。その開きの理由を一言でまとめると
 「生命の壁」が立ちはだかっているからです。
 (85頁)

 ところが、脳の作動原理が分かったからといって、全ての知性が
 再現できるわけではありません。というのも、私たちの知性は、
 私たちの持つ無数の欲望や感性と結びついているからです。
 人間の心に潜む欲望や感性の全てを取り出すことは、現在の
 技術ではできません。
 人間の欲望は、食欲や性欲など生存や繁殖に関わるものに
 限定されておらず、自殺願望や破滅願望をも含んでおり多方向的
 です。感性にしても、そよ風が頬を撫でたら心地よいが、
 強風が吹き付けたら不快であるというように、繊細かつ複雑です。
 (87-88頁)

 生命の壁として最も分かりやすく誰でも思いつくのは、AIが人間の
 よな身体を持たないがゆえに「身体知」を持ちえないということで
 しょう。「身体知」とは、泳ぎ方とかバッドの振り方、バイオリンの
 弾き方のような、ことばでは明示し難い無数の身体感覚に基づいた
 知識のことです。
 (93頁)

現在のAIは将棋ソフトや、自動翻訳や、レコメンドシステムなど、
ある機能に特化した「特化型AI」であるとされています。
しかし、人間の脳機能を真似ることで開発が進められているのが、
「汎用AI」と呼ばれるもので、人間の知性に近いものです。
現在、グーグル傘下のディープマインド社などが開発を急いでいます。

この「汎用AI」が実用化されれば、多機能な事を成し遂げつつ、
学習機能を備えて、より効率的効果的に問題解決ができる機械が
普及していくことになります。2030年代には実用化されるということ
ですから、もう10年、20年以内です。今の小学生が社会に出るころ
にはもう「汎用AI」が世に出て、多くの仕事を人間に変り行っている
事だと思います。


しかしながら、全ての仕事を直ちに「汎用AI」ができるのかといえば、
そういうわけではありません。「身体知」がないこと、人間らしさ(感性)
がないことなどが、その理由です。

英語の翻訳などはAIが担う事ができるはずですが、例えば
ビジネスにおける人間関係や社会環境、ライバル関係などを考慮した
交渉コミュニケーションなどは、汎用AIでも難しいと思います。

また画面の中のサッカーゲームでは汎用AIは部類の強さを誇るかも
しれませんが、実際に体を動かすAI搭載ロボットと人間とのゲームで
あれば、AIチームはおそらく人間チームには勝てないはずです。
(少なくとも2030年代では。いずれAIチームが勝つような時代も
 くると思いますが)

休日の使い方について「汎用AI」に相談した時に、
美術館や博物館を進めるでしょうか。仮に美術館や博物館をおススメ
してくれるAIが出たとしても、その人にとってどんな美術館がいいのか
もしくは、美術館と同様に、素晴らしい絶景が見える丘が同等の
価値を持ちうることをAIは理解できているでしょうか。
おそらく2030年代にはそうしたことをAIはカバーできていないはずです。

飛行機がない時代に、飛行機のことを想像できないように、
またロケットがない時代に、まさか星座や月を見上げていた観賞としての
宇宙がアクセス可能であることが想像できないように、「汎用AI」が出現
した時に、どのような社会が待っているのかは想像することは難しいですが
そのスピードは特異点があるかのように、ある時点から全く異なる次元の
社会になることはないと思われます。やはり汎用AIが出現したとしても
その進化には時間的猶予があり、人間はそうした社会変化に順応していく
必要があるものの、まず考えるべきは、「汎用AI」第1世代に備えて、
働く人や今の子ども達の教育や職業訓練を行っていくことであると考えます。

「汎用AI」第1世代である2030年代にあって、考えるべきことの前提は
「消費」と「生産」、そして「価値」の関係は変わらないことだと考えます。
すなわち、人間が生きていくために、より良い生活を過ごしていくために
「消費」はなくならないはずです。そして消費を支える「生産」もなくならない
はずです。この「生産」の部分を、人間とAIが分け合っていくと思われます。

そして「価値」は、「消費(需要)」と「生産(供給)」の関係で成り立つことは
いまから10年先、20年先でも変わらないはずです。


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Posted by 藤井哲也 at 16:02Comments(0)情熱(私の思い)

2018年07月05日

AIに勝てる人材の可能性(2)



改めて経験学習理論について振り返りたいが、
有名なコルブの理論を紹介したい。




「濃い具体的な経験」がまず必須であり、
その経験を知見に変換するためには、
「省察」と「概念化」によって自分のものとし、
さらに「実践」を通じて、経験知・実践知として
蓄積していくことが求められます。

省察は、クリティカルシンキング、つまり批判的思考とも
言われますが、これは他人や客観的事実に対する批判のみ
ならず、自分の行動や思考に対しても批判的であるかという
ことです。経験を積めば積むほど、人は信念を持つように
なりますが、これは省察とは相入れにくいもので、
信念を持っている人は、自分の思考や行動とは異なることがらに
対してなかなか受け入れることができにくくなります。

だから歳を重ね、経験を積むほど、頑固になり、
堅物になってしまうのです。

また概念化は、メタ認知のスキルが大きく関係していると思います。
そして実践を積み重ねる必要性もありますが、やはり
人は機械と違って、体力や気力、お金や時間の面でも、
制約がありますので、どうしても実践の機会は機械学習に比べて
劣ってしまうことが多いのではないでしょうか。

以上の事柄を踏まえ、やはりAIというのは人間の労働や雇用に
対して一定の脅威であることは間違いないと思います。
機械が学習するスピードの方が断然早く、パターンや概念化する
力というのも、高い知性を持った人間がプログラミングによって
生成することができるわけです。さらには、ディープラーニングの
技術により、実践を積み重ねる中で、どんどん経験知を高めて
いくことができるのです。


一方で、AIに人間が勝てるとすれば、どの様な事柄でしょうか?

井上智洋氏の「人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊」は
ベストセラーとなった著書です。


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この本などを読む中で、AI時代でも勝てる人材の
要件を考えてみたいと思います。


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Posted by 藤井哲也 at 10:18Comments(0)情熱(私の思い)