2018年06月18日

子育て(育児)や自治会・PTAなどの社会的活動はビジネススキル獲得につながっているのか?


従来の研究では正社員での就労経験、
特に管理職の経験はビジネススキルの獲得に
大きく影響を与えていると考えられてきました。
(ワグナーやスタンバーグの研究など)

また、学校を卒業して最初の数年間の頑張り具合が、
キャリア初期のビジネススキル基盤形成にも
大きく繋がっていることも実証的に明らかになっています。
(佐藤博樹教授の研究など)

さらに非正社員のキャリア形成には、
一貫性がないものの、総じて人材育成機会や、
与えられる仕事の質が正社員と異なることから、
差があることが分かっています。


そして今回、私が研究論文で明らかにしたように、
正社員の就労経験年数は、ビジネススキル獲得に有意に
つながっている(テクニカルスキルとコンセプチュアルスキル)
ということと、
非正社員の就労経験年数は、ビジネススキルの獲得には
有意な関係が見られなかったこと(因果関係が見られない)が
分かってきました。


1993年以降とされるポスト就職氷河期にあっては、
正社員になりたくともなれず、非正社員として年数を重ね、
いつのまにか30歳代を迎えた人も多くいます。
非正社員のキャリア形成機会、ビジネススキル獲得機会が
限定的であることを考えると、
こうした就職氷河期時代に就職した世代、
そして就職氷河期とは関係なく、
新人であっても非正社員という働きスタイルが
一般的になってきた昨今、30歳代後半から40歳代前半という
アラフォー世代にとって、非正社員と正社員との間には
大きな壁が生じていることになっています。

実際、アラフォー世代の人にとって、これまで派遣社員や
契約社員で主に働いてきた方は、いま労働売り手市場であるものの
正社員転換は思ったように進んでいません。
これは買い手(企業)にとって、
これまで非正社員経験が主だった求職者への評価がどうしても
低くなってしまっているからです。
それは非正社員としてマネジメントスキルを身に付けてこなかっただろう、
または営業職や事務職として専門的な知識や経験を積んでこなかっただろう
という固定的観念があるからだろうと思います。

私がいま取り組みたいのは、そうした固定的観念の打破に他なりません。

私の研究で取り組んだのは、「子育て・育児」の経験も、
ビジネス経験との間で代替性があるのではないか、
自治会やPTAの活動も、ビジネススキルの獲得につながっているのではないか、
もしつながっているのであれば、そうした経験を積んできた方々にとって、
たとえ正社員としての就労経験が少なくとも、
あらためてキャリア形成の道が開く事ができるのではないかと考えてました。

実際には、そうした非ビジネスの経験も、ビジネスに生かすことができる
スキルの獲得につながっていることが明らかになったことから、
就労支援や公共政策に大いに活用することができるものと考えています。

現在、さらに深く、「どのような育児経験」が「どのようなビジネススキルの獲得」
につながっているのかを調査分析しているところで、
あわせて「育児とビジネスにおける類似的に獲得できるスキル」について、
研究を深めています。

こうしたことが分かることで、非正社員経験が長い方の正社員登用の際の
見極めのポイントを提示できることや、非正社員経験が長かった方に対して、
どのような経験を積めばビジネススキルを獲得して正社員就労に結びつける
ことができるのかを明示することができるものと考えています。


仕事と学びに関する研究を、これからのパシオは進めていこうと考えています。
理念、「若者が情熱を持ってイキイキと働ける社会づくりに貢献する」は、
時代と共に変えていくタイミングであるのかもしれません。
若者はもちろん、1990年代半ば以降に就職した現在のアラフォー世代までも
包含した、ポスト就職氷河期世代に対して、「イキイキと楽しむことができる社会」を
目指した取り組みへとステップアップをしていこうと考えています。

             

                         情熱を胸にICON179







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