2009年04月20日
組織コミットメントとリテンション・マネジメントの関係性
すでにご存知の通り、「職務満足度」と「離職率」との関係はあまりありません。
「職務満足度」は、現在にどれくらい満足しているのかを示すものであり、
先にも書いたことがありましたが、どれだけ現在の職務満足度が高くても、
この先真っ暗という会社には優秀で先を見ている人財ほど残らないものです。
そうした会社に残るのは、いわゆる付属的賭け理論でいう、この会社でしか
役に立たない特殊スキルや待遇を得ている人(つまりポータブルスキルを持って
いない人)になり、そうした人は多くの場合、“ぶらさがり社員”、“窓際社員”、
“ダメ社員”の烙印を社内外から押されている人ではないでしょうか。
そういう人が残ったとしても会社には未来はありません。未来が無いとすれば
益々優秀、有望な人材が流出してしまうのです。
「職務満足度」と「離職率」の関係性が見られないことから、新たな議論が
なされて出てきた概念として「組織コミットメント」というものがあります。
「組織コミットメント」とは、シカゴ学派のベッカーが最初に概念化したもので、
「組織との結びつき、最近で言えば“エンゲージメント”」のような
意味合いを持っています。
正確な定義づけは様々ありますが、「組織と従業員の関係を特徴付け、
組織におけるメンバーシップの継続あるいは中止する決定に関する
心理的状態」(Meyer&Allen)というものがあります。
組織コミットメントの話をすればキリがないが、基本的にはわが社も
リテンションマネジメントの導入に当たっては大いに参考にしている考え方である。
ちなみにわが社が参考にしているものをとりあげれば、先日紹介した
RJP理論や、マズローやアルダファーの欲求階層説、三隅二十二先生の
PM理論、早大の小杉先生のソーシャルサポート並びにコーピングの研究、
E・H・シャイン教授のキャリアアンカー理論、そしてマイヤーとアレンによる
組織コミットメント(情緒的コミットメント、功利的(継続的)コミットメント、
規範的コミットメント)の考え方などがある。そのほか、当然ながら、
モチベーション理論の最もたるマクレランド教授による達成動機付け論、
ブルームの期待理論、ハーツバーグの衛生要因/動機付け要因理論がある。
しかしいずれも多くが海外で理論だてられたものであり、基礎的サンプルデータの
多くも海外のものである。そうした意味から、日本独自の研究をされている
同志社大学の太田肇教授の研究や、慶応義塾の花田教授の考え方には
共感できることがあるし、「菊と刀」で有名なベネディクトアンダーソンの考え方も
非常に参考になるところである。
「組織コミットメント」と「リテンション(離職意向の軽減=人材流出の予防)」には
統計的には有意的な関係(つまり、関係性が強いですよというもの)といわれており、
組織コミットメント論からリテンション施策を講じることは効果がある。
わが社もそうした基礎理論を用いて、たとえば「Match!!!」という退職危険性診断テスト
を開発して販売していたりするし、コンサルティングのベースとなる「RMS」
という組織離職要因サーベイを開発し、コンサルティングでバリバリ活用している。
しかし感じるのは、「組織コミットメント」の考え方をそのままリテンションマネジメントのための
ソリューションに用いたとしても、うまくいかない場合もある。最大の難関はバランスであると感じる。
なぜ若手社員が離職するのかという問いに対して、その都度、私なりに
答えが出てきたのだが、最近になってまたワンランク上がった(止揚)感がある。
こうすれば若手社員が辞めない、優秀な社員が辞めない、将来の幹部候補が
辞めないという仕組みづくりの基礎および、コンサルティングの流れがつかめて
きたような気がする。
できれば一般にこうした考え方を公表したいと考えているがまだ早いと感じる。
先には先があるという感じがするし、もう少しだけ自分の中で統合したいと
考えているからだ。
最近も執筆させていただくことが非常に多いが、まだ核心的部分には
触れていないと感じる。しかし出し惜しみではなく、それは自身に対する
そしてわが社としての矜持(こんなところで使ってみたのだが・・・)なのである。
もう少しでまとまりそうな気がするが、近いうちに公開したい。
情熱を胸に
Posted by 藤井哲也 at 08:05│Comments(2)
│リテンション(人財定着)
この記事へのコメント
ポータブルスキル・・。
真面目に考えてしまいます。
真面目に考えてしまいます。
Posted by toto at 2009年04月22日 16:31
toto様
コメントありがとうございます。
「ポータルブルスキル」という言葉は私はあまり
好きではないのですが、今の時代必要になって
きていますよね。
組織コミットメントとの関係性で言うと、
ポータブルスキルを身につけるように会社が
支援すると逆に退職するリスクも高まりますが、
それと同時に将来得られるポータブルスキルの
期待感が上回る場合が多く、退出ベクトルと
定着ベクトルとの間では定着が若干ながら
効果があるとされています。
会社にとってはいかにポータブルスキルを
身につけられるよう支援できるのかが、
リテンションマネジメントにとっても重要になっています。
情熱を胸に
コメントありがとうございます。
「ポータルブルスキル」という言葉は私はあまり
好きではないのですが、今の時代必要になって
きていますよね。
組織コミットメントとの関係性で言うと、
ポータブルスキルを身につけるように会社が
支援すると逆に退職するリスクも高まりますが、
それと同時に将来得られるポータブルスキルの
期待感が上回る場合が多く、退出ベクトルと
定着ベクトルとの間では定着が若干ながら
効果があるとされています。
会社にとってはいかにポータブルスキルを
身につけられるよう支援できるのかが、
リテンションマネジメントにとっても重要になっています。
情熱を胸に
Posted by 藤井哲也 at 2009年04月22日 19:30
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。